フランスにおけるルペン大統領の誕生も決選投票での過半数の獲得という分厚い壁に阻まれるだろう。世論調査では第1回投票でのルペン候補への支持率は25%前後。11月27日に中道・右派の統一候補に選出されたフランソワ・フィヨン元首相をわずかに下回る程度で、得票率1位で決選投票に進む可能性は十分にある。しかし、決選投票が、極右のルペン対右派のフィヨンという対決になった場合、第1回投票で左派を支持した層をどこまで取り込めるかが勝負になる。そこでは、2002年の大統領選挙での、マリーヌ・ルペン党首の父であるジャン=マリー・ルペン対現職のシラク大統領(右派)の決選投票と同じく、極右の大統領阻止を望む票が、右派に回ると見られる。
極右・ポピュリスト政党による政権樹立に至らなければ、EUやユーロの離脱が意識されて市場の緊張が長く続くということはないだろう。
ただ、英国の国民投票や米国の大統領選挙が、大方が想定したシナリオを裏切る結果となったことを踏まえると、想定外のシナリオを検討する必要はある。
想定外を警戒すべきはイタリアよりもフランス
2017年に欧州で予定される選挙で想定外があり得て、かつ、その潜在的な影響が大きい国として警戒すべきはフランスだろう。フランスは、ドイツとともに欧州統合を牽引してきた国。そのフランスにEU懐疑派の大統領が誕生する意味はやはり重い。政治と銀行の不良債権問題の共振に苦しむイタリアの動向も気掛かりだが、本連載の記事「イタリア国民投票「否決」は何をもたらすのか」でも触れた通り、12月の国民投票が否決という結果に終わったことで、むしろ五つ星運動が単独政権を樹立する可能性は低下したと考えている。
フランスの大統領選挙の想定外は、第1回投票で左派を支持した層が、予想以上に多く極右支持に回った場合に起こる。2002年の決選投票では、左派支持層が、ほぼ全面的にシラク大統領(当時)支持に回ったため、ルペン(父)候補の得票率は第1回投票からほとんど伸びず、17.79%対82.21%という大差で決着した。しかし、マリーヌ・ルペン党首は、極右政党のイメージの改善に努め、社会福祉の充実をうたい、左派に失望した一部の支持者の受け皿になる土壌を作ってきた。直近の世論調査では、ルペン対フィヨンの決選投票は、大差でのルペン敗北を示唆するが、その差は2002年ほど大きくはない。
英国の国民投票でも米国の大統領選挙でも勝敗を決したのは、現状に強い不満を持つ労働者など左派の支持者の取り込みだった。フランスでは、英米のような展開はあり得ないと確信してよいのかどうか。まずは、1月22日の第1回投票、29日の決選投票で決まる社会党など左派の統一候補選出の行方を注意深く見守りたい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら