2017年に市場が警戒すべき欧州リスクは? 市場の基調を左右するのはトランプ氏の政策

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トランプ政権の政策運営が2017年の世界経済、市場の上下両方向へのリスク要因であるのに対して、欧州の政治イベントはもっぱら下方リスク要因として意識されている。2017年中に予定される国政選挙では、いずれも、極右やポピュリスト政党の躍進が見込まれ、英国に続くEUやユーロ離脱国の出現が意識されやすくなっている。

3月に下院選挙を予定するオランダではEU懐疑派の「自由党」が支持率で第1位、2017年中に総選挙を実施する可能性が濃厚なイタリアでもポピュリスト政党でユーロ離脱の国民投票を示唆する「五つ星運動」が与党・民主党と支持率トップの座を競う。

2回投票制で行われるフランスの大統領選挙では、反EU・反移民を掲げる極右「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首の5月7日の決戦投票への進出が確実視される。メルケル首相が四選を狙うドイツの連邦議会選挙でもEU懐疑派で難民制限を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持の広がりが確認されるだろう。

欧州発のリスクも基調を変えるほどではない

2017年は、こうした欧州の政治イベントによって、一時的に市場がリスク回避傾向を強める局面がしばしば訪れるだろう。しかし、米国のトランプ大統領選出のように、その影響がよくも悪くも地域的に広い範囲に及び、かつ、ある程度長い期間持続することはないと思っている。

最大の理由は、極右やポピュリスト政党が票を伸ばすことはあっても、過半数を超える支持は獲得できず、政権の樹立には至らないと見られることだ。ドイツではAfDの支持率は15%程度にとどまっており、政権の座を脅かすには至っていない。

オランダの自由党、イタリアの五つ星運動は、仮に第1党となっても政権樹立には至らないだろう。両党ともに支持率はおよそ3割。単独過半数の獲得は困難だ。既存の政治・政党を批判し支持を広げる五つ星運動は、他党との連立を否定している。人種や宗教による差別を禁じるオランダで、差別や憎悪を煽る発言を繰り返すウィルダース党首率いる自由党と連立を組む政党は現れないだろう。

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