グーグルが実現する「声だけで操作する生活」 音声認識スピーカー「グーグルホーム」の実力

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「家でアシスタントを使うための最適なツール」というコンセプトで、前出のチャンドラ氏は開発を進めたという。スマホの欠点は手に持っていなければならない点にある。「料理や食器洗い、子供との遊びなど、家の中ではハンズフリーでいたい状況が多い。だからこそ広範囲の音声認識が可能なスピーカーという形にした」(チャンドラ氏)。

画面のないデバイスゆえの挑戦

製品開発担当ヴァイスプレジデントのリシ・チャンドラ氏。「OK、グーグル。ブルーノ・マーズを再生して」と言うと…(下の写真に続く)

そもそもスピーカーであるグーグルホームには、従来のコンピューターでは常識だった「画面」がない。これはグーグルにとってとりわけ新しい挑戦だった。先述のように「新鮮なカニに合うワイン」を検索したいときには、パソコンやスマホのように検索結果を一覧で表示したりはできない。ここには検索技術の進歩がかかわっている。

音声で回答する以上、最適な検索結果を簡潔な文章にまとめる必要がある。グーグル検索の機能の一つとして、検索フォームに質問調の文章を入れると、検索結果の最上部に端的な答えが表示されるというものがある。「日本の人口は何人?」と入れれば、「1.273億人」と出てくるのだ。この機能が音声での回答を可能にした。

テレビで自動的にブルーノ・マーズのミュージックビデオの再生が始まった

外部アプリやサービスでも、音声コマンドが実行できるよう連携するプログラムが組み込まれていれば利用できる。たとえば配車を頼みたい旨を話しかけると、「ウーバー」の予約ができたり、「ネットフリックス」の映画をテレビに映したりといったことが可能。このほか音楽配信サービスのスポティファイ、米大手紙ウォールストリートジャーナルや独高級車のメルセデス・ベンツなど、現在30社以上が対応している。

ネットにつながるだけではない。通信機能を持った電球やサーモスタット(室温調整装置)などともつながり、たとえば「寒い」と一言言うだけで、空調が部屋を暖めるといったことも可能になる。「これまでのスマートホームはスマホで操作するものばかりだった。音声操作はそれよりも圧倒的に便利にできる」(チャンドラ氏)。

もっとも、こうしたスマートホーム像をいち早く示したのが、ネット通販世界最大手の米アマゾンだった。同社は独自の音声認識AI「アレクサ」を搭載した筒形のスピーカー「エコー」を2014年に発売。これまでに数百万台を出荷したとみられる。2016年12月27日、アマゾンはこの年末商戦でエコーシリーズの製品の出荷が2015年比で9倍になったと発表。その好調ぶりを示した。

グーグルホームも発売後初めてとなる年末商戦での売れ行きがカギとなるだろう。創業後18年間で築いてきた検索技術によるアドバンテージを、ハードウエアビジネスでも発揮できるか。IT企業としての新たなステージの行方は、このグーグルホームが握っているといっても過言ではない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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