大企業の若手はなぜベンチャーに憧れるのか 企業横断の勉強・交流会が狙う閉塞感の打破

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隣の芝生は青く見えるというが、どのくらい青いのかを確認していないのだ。普段の営業活動では、詳細なヒアリングを重ねるのにも関わらず、だ。少なくとも、周りの仲間と悩みを共有することで新たに見える世界はあるのだ。

大企業の勉強会連合 One JAPAN誕生

そんなことを考えている中、出会ったのがOne JAPANだった。代表であるパナソニックの濱松誠氏、共同発起人である富士ゼロックスの大川陽介氏、NTT東日本の山本将裕氏に話を聞いた。

パナソニック、富士ゼロックス、NTT東日本の若手社員と議論した

何かのムーブメントは、同時多発的に、連鎖的に起こる。大手企業各社で社内勉強会・交流会の取り組みが始まったのは、2012年の春だった。この年3月に、パナソニックで「One Panasonic」が、4月に富士ゼロックスの「わるだ組」が始まった。

他社においても、このような動きは広がっていたという。2015年にはNTTグループにおいて「O-Den」という、グループ横断の取り組みが始まった。各社が立ち上げた勉強会・交流会への参加社員は50名から5000名と幅広い。全従業員の数%にも満たないレベルではあるが、とはいえ一定の人数が参加していると言える。

日本の大企業において、同時多発的に勉強会・交流会が立ち上がったのには、理由がある。それは、大企業の若手社員が同時期に、同じような悩みに直面したからだ。

その頃、ちょうど大震災があった。他にも政治や経済などあらゆる点において変化があり、自分たちが社会に対して何が出来るのかを考えた。自分は大企業の外に出たら通用しないのではないかという危機感や、自社をどう変革するかという問題意識もあった。

震災の際、石巻勤務で、営業車で太平洋沿いを走っている際に被災。間一髪で津波から逃げたという経験の持ち主である、NTT東日本の山本将裕氏はこう語る。「飲み会で愚痴を言うよりも、前向きになる仲間が欲しいと思ってO-Denを始めた。最初は10人くらいから。徐々に増えていった」

パナソニックで「One Panasonic」を主宰する濱松誠氏は個人と個人が力を合わせやすくなったと語る。「個人がメディア化しているように思うのです。SNSやスマホのおかげで、個人が情報発信しやすい時代になりました。Facebookのような実名SNSが出て、さらに個人がつながりやすくなりました」

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