松山英樹プロの快進撃を支える努力とは何か 世界最高峰の戦いの中で自分を変えてきた

拡大
縮小

アマチュアにしてマスターズに出場した2011年、2012年ごろは「一番好きなクラブはパターです」「一番自信を持ってやっているのはパッティングです」と言い、波に乗るときも崩れるときも、そのきっかけはパットだった。

プロになり、米ツアーに挑み始めてからの松山は、今でもパターが好きという気持ちに変わりはないのかもしれないが、自分のゲームの根幹をなすべきものはアイアンなのだと考えている。今の松山は、こう言う。

「アメリカのほうが、ショットが重視される」「ショットがうまい人が上位に来る」「それでパットが入れば、そりゃあ優勝する」

頑強な肉体はスイングの土台。安定性の高いアイアンショットは自分の試合運びの土台。松山はスイングと試合運び、双方のベース部分をしっかり強化したと言える。

2014年にメモリアル・トーナメントを制し、米ツアー初優勝を挙げたときと比べれば、2016年にウェイストマネジメント フェニックス・オープンを制して米ツアー2勝目を挙げた松山は、勝利した瞬間のリアクションも表情も感想も、すべてが変わっていた。

どちらもプレーオフに持ち込んでの勝利という点は共通していたが、初優勝のときはドライバーを壊してしまったり、ギャラリーの女性に打球を当ててしまったりとハプニングの連続。見ているほうもハラハラ、ドキドキさせられた。プレーオフ1ホール目の18番でウイニングパットを沈めた瞬間、松山は両腕で大きなガッツポーズを取り、握りしめた右手を宙にかざして勝利の味を噛み締めた。表彰式、優勝会見、囲み取材、スポンサーや大会関係者への挨拶回り。夜遅くまで延々と続いた“優勝者の行事”を、松山は右も左もわからない様子でこなしていた。

優勝しても悔しがる一方で、笑顔も増えた

だが、2016年の松山はどうだったか。大観衆に囲まれながらリッキー・ファウラーとの熱戦を制した2勝目。戦いぶりは派手だったが、それと対照的に、松山の優勝直後のクールダウンはびっくりするほど早かった。

プレーオフ4ホール目で最後の最後にバーディーパットをぽろっと外した自分が許せなかったのだろう。「終わり方が良くなかったので負けた人みたいです」と、優勝したのに悔しささえにじませていた。

今年10月の日本オープン優勝後、上海で世界選手権シリーズのHSBCチャンピオンズを制し、米ツアー3勝目を挙げたときは、2位に7打差の圧勝ゆえ、それまでの2勝のときとはまったく異なる余裕の笑みをたたえ、貫禄も漂わせていた。

12月に行われたヒーロー・ワールド・チャレンジの表彰式では、大会ホストのタイガー・ウッズと並んで笑顔で立った松山の姿に惚れ惚れさせられたファンは多かったことだろう。

次ページメディア対応が柔軟になった
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT