「偽造薬」のオンライン販売は、極めて深刻だ ED薬の4割が偽造、育毛剤、やせ薬にもご用心

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代表的な不正医薬品販売サイト。写真にある商品はすべて日本では承認されていない(写真:レジットスクリプト)

不正医薬品の販売サイトを見ると、正確な知識がなければ正規品と見分けがつかない。たとえば「タダシップ」「SAVITRA」はそれぞれシアリス、レビトラのジェネリックと表示されているが、ともに特許はまだ切れておらず、正規のジェネリックは存在しない。このケースでは医薬品の特許取得が困難なインド国内だけで流通しているはずのものが輸出に向けられている。

またバイアグラの100ミリグラム錠は、日本国内では未承認(国内では25ミリグラムと50ミリグラムが承認)。非正規のジェネリックを含め未承認薬では有効性が出ない、副作用が重い、表示されていない成分の混入による未知の副作用など、数多くのリスクをはらむ。

なぜ偽造薬に走るのか

ED薬、育毛薬、ダイエットサプリに共通するのは、購入者の「人に知られるのが恥ずかしい」という感情だ。偽造薬はこういう人の感情につけ込む。価格が安いことも購買のハードルを下げる。

厚労省も2014年4月から、国内外のインターネット販売サイトに対する能動的監視「インターネットパトロール」事業として、米国のレジットスクリプト社に委託を行っている。同社は各国の規制当局や国際刑事警察機構(インターポール)などとも連携しており、不正医薬品販売サイトを発見すると、そのドメイン登録をする業者(レジストラ)に不正サイトのドメイン名の停止要請を行い、応じない場合はレジストラの国際監督機関であるICANNや、当該国の政府機関にも働きかける。海外の大手レジストラは、要請を受けると24時間以内に不正サイトのドメイン閉鎖に対応している。

ところが、日本では大手のレジストラが「対応を拒否している状況」(岡沢宏美レジットスクリプト アジア・政策執行部長)。日本語の不正医薬品販売サイト約2300件のうち、66%が1社の大手レジストラでドメイン登録しているという。「日本のインターネット関連事業者のコンプライアンス強化が必要」と岡沢氏は強調する。米国であれば、違法な医薬品を販売するサイトだけでなく、違法サイトの有料広告を掲載したサイトやインフラ提供者、配達業者も、犯罪ほう助や共犯に問われることがある。

内外の偽造医薬品に詳しい木村和子金沢大学教授は「麻薬の取り締まりが厳しくなったために、偽造薬が犯罪組織の資金源になっている」可能性を指摘する。国内の反社会的組織ばかりでなく、海外のテロ組織が含まれているおそれもある。

ネットで購入した薬物で体調に異変が起きたら「『あやしいヤクブツ連絡ネット』の窓口に通報・相談してほしい」(厚労省監視指導・麻薬対策課)。もちろんその前に、きちんとした医師の診察・処方を受けること、そして怪しいサイトから安易に購入しないことが重要だ。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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