ポルシェ、脱「2ドアスポーツカー」に動く理由 SUVと4ドアセダンで顧客の「若返り」を狙う
独フォルクスワーゲングループの一角を占めるポルシェ。販売は国内外で好調だ。2015年の世界販売は前年比約18%増の約22.5万台と過去最高を記録。2016年もそれを上回る水準で推移している。日本でも2015年に10年前の1.8倍となる6690台へと成長し、4年連続で過去最高を更新中だ。
ポルシェにとって日本市場は、販売台数で国として世界6番目。だが売れ筋車種に目を向けると、日本は特異だ。
全体の販売台数に占める911、「ボクスター」、「ケイマン」といった2ドアスポーツカーの割合が、日本は約45%と世界でトップなのだ。ポルシェの主力市場である米国と中国でSUV比率が高いのとは対照的。最近も911を世界で最も多く売ったセールスマンとして日本人が表彰された。価格は1300万円以上だが、トップセールスマンは年70台を売っていたという。
スポーツカーの名門が抱えるジレンマ
ポルシェにとってはこの状況が喜ばしくもあり、悩ましくもある。ポルシェの保有者はロイヤルティが高いとされるが、その平均年齢は現在60歳と高齢化が進んでいる。顧客層の拡大が課題だ。
そこで始めたのが、脱「2ドアスポーツカー」だった。最近のポルシェは、4人乗り4ドアセダンのパナメーラ、SUVの「カイエン」(2010年発売)と一回り小さい「マカン」(2014年発売)など、これまで訴求できなかった家族層などに向けた車種を投入している。
中でもマカンの最低価格は600万円台で、憧れのポルシェオーナーになるには最も手頃。こうしてポルシェ車を顧客の選択肢に入れてもらうのが狙いだ。
実際、新型パナメーラでは成果が出ている。受注状況をみると、新規顧客が半分ほどを占めるうえ、平均年齢は10歳以上下がっているという。
ただあくまでもスポーツカーという原点は守る方針だ。今回のコンセプトも「ラグジュアリーセダンの中のスポーツカー」。七五三木社長は「新型パナメーラは運転席と後部座席が同じような乗り心地。普通の車だと快適性を重視する後部座席でも、スポーツカーを(操っているように)感じられる」と語る。
スポーツカーの名門として伝統的なブランド価値は守っていかなければならない。その上で新しい顧客をどう取り込んでいくか。名門ポルシェの試行錯誤が続く。
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