地方再生、被災地復興には共通の課題がある 被災地の今から考える<前編>

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今回の取材では、20~30代女性を取り巻く課題に焦点を当てた。その理由や背景を、あえて、取材源をあいまいにしたまま書いておきたい。外部の取材者という立場で、これまで約3年、震災被害に遭った人や被災地支援に関わる人の話を聞いてきた。当初は震災や津波がもたらした被害とその回復に関する話題が多かった。そして、徐々に話題は日本の地方都市や農村部が共通して抱える課題に移っている。

地方の衰退を加速させているもの

多くの人の話を総合すると、少子高齢化社会で地方の衰退を加速させているのは「女性や若者が生きづらい」ことだ、と強く感じる。漠然とした、とらえどころのない課題に思えるかもしれない。しかし、若者や女性を「生きづらくしているもの」に正面から向き合い、変えていかないと地方の活性化はない、という思いは、取材を重ねるにつれて強くなった。

ある街では、男女を問わず若い人が新規の事業を始めにくい状況を聞いた。需要が大きなサービスを新規で始めようとした人に対し、隣接分野のサービス提供者が「聞いていない」と邪魔をしてきた例もある。ちなみにこのサービスを始めるにあたっての法規制はなく、既存業者の行動は単なる嫌がらせである。新しいことに挑戦する人の足を引っ張るのは、商売敵だけではない。親族や姑の心ない言葉に悩まされている女性の話もよく聞く。

地方で特に「生きづらさ」を感じるのは、若い女性、とりわけ子育て中の若い女性たちだ。たとえば復興や町づくりを考える会合。政治・社会参加の大事な機会だが、夜開かれることが多い。そのため、育児や介護を担う女性は参加できず、高齢者や男性だけで意思決定される。ある女性は、そういった集まりに子連れで参加したところ、高齢男性から「非常識だ」と言われたそうだ。これでは、子育て世代は実質的に排除されている形になる。

こうした例は、東北に限ったものではなく、日本全国に共通する課題である。20~30代の女性たちが自分らしく生きられると感じ、この地域で働いて家族を作りたいと思えるような取り組みこそ、時間はかかるが人口減少や少子化対策問題への根本治療になると私は考えている。

講演などで地方へ行く機会がある。そのたび「この地域の男女共同参画の課題は何ですか?」と地域の人の意見を聞く。北陸のある県では「因習」、九州の複数の県で「男尊女卑」そして東北では「家父長制」という答えが多く返ってきた。いずれも、日常用語ではないが、話を聞かせてくれる人たちが、そう感じる理由を掘り下げていくと納得できる。ある人は地方議員の、ある人は自治会長の、そしてある人は地元の役所や親族の言動に問題を感じており「何とか変えたいです」と言う。

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