イタリア最大手銀行は「りそな」になれるか かつての日本に似るが、より深刻な銀行危機

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さらなる成長を目指したウニクレディトは、1999年からは、アドリア海の向こう側、中東欧の買収を開始した。これらによってウニクレディトの総資産は、2006年までの7年間で何と4.9倍に膨れ上がった。

しかし、規模拡大のペースはあまりにも急過ぎた。海外の矢継ぎ早な買収はウニクレディトの最初の蹉跌である。

「増資は不要。我々は危機を脱した」―― 2014年3月、その前4半期に1.8兆円の巨額損失を計上したウニクレディトのフェデリコ・ギッツォーニCEOはV字回復を強調した。株式市場はポジティブに反応したが、巨額な損失で毀損した資本を増強しなかったことも、ウニクレディトの大きな過ちだったと思われる。

当時のウニクレディトは、2度にわたる合計1.5兆円の増資を行った直後だっただけに、それ以上の増資は行いにくかったのかもしれない。しかし、相当の余剰資本がない限り、経済環境も逆風の中で、巨額の損失を放置することは難しい。結果としてこれらの積み重ねが今の窮状を招いたといえる。

EUの縛りで、公的資金の注入ができない

では今回のウニクレディトの再建策は、かつてりそなに公的資金が注入された時のような劇的復調の契機となるだろうか。残念ながら、答えはノーである。

第1に、増資の実現可能性だ。ウニクレディトは、既に中東欧の拠点の整理を始めている。しかし、今のウニクレディトの収益の52%は中東欧とドイツという国外業務から上がっている。しかも経済成長率も、イタリアが0.9%~1.0%と予想されているのに対し、中東欧諸国は2~3%と予想されている。

儲かる"虎の子"を売ってしまうにも関わらず、当期利益を昨年比3倍近くに拡大するという成長ストーリーを提示されても、投資家は、鵜呑みにするわけにはいかないだろう。

また、ウニクレディトの株価純資産倍率は、現在0.2倍程度と極めて低い。これだけ株価がストレスにさらされている場合は、りそな方式で公的資金を受けるのがむしろ王道だろう。株価をこれ以上危険にさらすことなく必要額を確保できるし、注入後も、政府がお金を入れているなら潰さないだろうという安心感が続く。

しかしEU(欧州連合)の支援ルールでは、公的資金を注入するなら、社債保有者に犠牲になってもらわなければならない。しかも、イタリアでは年金運用のため銀行社債を保有する個人が多いのだ。公的資金注入は年金生活者などの個人を犠牲にする決断になる。ポピュリズム政権が台頭する政治環境では取り難い選択肢だ。イタリア第3位の銀行で同じく再建中のモンテパスキが、苦しい中でも自力増資にこだわらなければならない理由もここにある。

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