都議会公明党が自民党に決別を宣言した真因 何が公明党を怒らせたのか

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根深い問題とは、選挙事情である。

2017年の都議選からは、4つの選挙区で定数が変わることになっている。中野区と北区では定数4が3に減らされ、逆に町田市では3から4、北多摩第3選挙区(調布市と狛江市)では2から3へと増える予定だ。

ここで注目すべきは北多摩第3選挙区で、現在は都議会自民党の栗山欽行氏と都議会民進党の尾崎大介氏の2名が議席を安定的に占めているが、第3の議席を目指して都議会公明党の中島義雄氏が世田谷区から選挙区を変えることになっている。これに協力をするべき自民党が、あろうことか“第2の候補”を擁立するという話が出てきたのだ。

この件について、公明党のある都議は「自民党は本気で我々と直接ぶつかるつもりなのか」と憤りを隠さない。

それはもっともなことだ。同選挙区は現職の2議席は安泰と見られている。全員当選を党是とする公明党にとって、友党である自民党が対抗馬をぶつける事態を看過できるはずがないのである。

目黒区でも第2の候補を擁立

だが自民党の“裏切り”は、いまに始まったことではない。2013年6月23日に行われた都議選において自民党は、定数3の目黒区に2人目の新人候補を擁立した。富裕層の多い目黒区は旧民主党支持者も多い一方で、自民党の支持基盤も頑強。

目黒区において、公明党は暗い過去を持っている。2006年11月30日に政務調査費不正使用問題で、公明党目黒区議6名が全員辞職した事件だ。翌2007年4月22日に行われた目黒区議選では、公明党は3議席まで落ち込んだ。

さらに2009年7月12日に行われた都議選では、公明党は目黒区の候補をベテランの東野秀平氏から北側一雄国交大臣の政務秘書官を務めた斉藤泰宏氏に替えている。斉藤氏は苦戦するものの、2万1531票を獲得して3位で初当選した。

それに対し、斉藤氏が2013年の都議選で獲得した票数は1万7321票で、前回より4210票減らしている。自民党現職の鈴木隆道氏が1万3877票、“第2の候補”で目黒区議だった栗山よしじ氏の1万4475票を合わせると2万8352票で、前回都議選で鈴木氏が獲得した2万4377票より3975票多い。斉藤氏が最初の都議選で獲得した票の一部を自民党に奪われたと見ることができるのだ。

選挙における図式は、「隙あらば侵食しようとする自民党」に対し、「攻防戦に打って出る公明党」という構図なのである。

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