欧州を揺さぶる「壊し屋トランプ」の恐怖 メルケル首相の側近らは頭を抱えている
欧州当局者らを混乱させている一因は、トランプ氏の組閣作業の二転三転ぶりだ。ロムニー氏のような人物と会談したかと思えば、数日後には別の候補者が浮上する。
諸外国にとって最も重要な人事は、13日に発表された米石油大手エクソンモービルの会長兼最高経営責任者(CEO)ティラーソン氏の国務長官への指名だった。ロムニー氏らの候補者を抑えての起用となった。
この人事は様々な反応を引き起こした。欧州当局者からは、ティラーソン氏とロシアおよびプーチン・ロシア大統領との親密な関係を懸念する声が聞かれる一方、国際経験豊かな大企業トップの就任は心強いとの見方もある。
メルケル首相の側近らは頭を抱えている
東欧の上級外交官は「見かけ上は、まったく良くない人事だ」が、「実際にロシアを知悉している国務長官が誕生すると考えれば、非常に興味深い」と語る。
ロシアに秋波を送るトランプ氏の姿勢に、メルケル首相の側近らは頭を抱えている。首相はウクライナ問題を巡る対ロシア制裁で、オバマ米大統領と足並みを揃えて欧州連合(EU)の陣頭指揮を取った。
トランプ氏が米国として制裁を撤回すれば、メルケル氏の対ロシア政策は崩れ、ウクライナは従来にも増して脆弱になる、とドイツ当局者らは語る。
イランと西側諸国との核合意にも心配は広がっている。トランプ氏が国家安全保障担当の大統領補佐官にイラン批判の急先鋒であるマイケル・フリン氏を指名したことで、懸念は一層強まった。