親依存の30歳女性が「自分は貧困」と思うワケ 部屋の中はキャラグッズだらけだが・・・

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「お忙しいときに申し訳ありません。じ、実は……今、また万引きで捕まっちゃいまして……誰も頼る人がいないんです。来てくれませんか?」

鈴木さんは、また万引きしたようだ。今は通報されて警備員室で警察を待っているという。溜息がでた。半年前ショッピングモールでシャケを盗んで捕まり、警察ざたになっている。どうしても旦那にバレたくないとの理由で、パート先の上司に扮して私が身元引受人となって厳重注意を受けて釈放された。あれは3度目の万引き現行犯だったので、今回は4度目となる。あきれた。

「今までとは別の警察署だし、前科はバレないと思うので、身元引受人がいれば怒られるだけで済むはずなんですよ。え、盗んだものですか? 200円くらいのリップクリームです。大丈夫です。だからお願いします」

取材中なので断った。「もういい加減旦那に迎えに来てもらって、子供のためにも万引きの病気を治したほうがいい」と言った。彼女はPTA役員を勤める地味な普通の女性だ。しかし、何度捕まっても病的な窃盗癖はどうしても治らないようだ。シャケにリップクリームと、一貫して数百円の安価な物を盗むこともわからない。半年前に身元引受人となって、舌の根も乾かぬうちに再犯では話にならない。冷たくあしらって電話を切ってしまった。

生きるヒントが欲しい

鈴木さんは新車購入の文化が根付く、北関東独特の貧困を抱える。月4万円の新車オートローンを組んでから家計がおかしくなっている。毎月の引き落としは切り抜けても、年1度の保険や固定資産税の支払いでつまずく。消費者金融に手を出して自転車操業となり、1度債務整理をしている。前回捕まったとき、「少しでも家計の足しになるように万引きに手をそめるようになった」と小さな声で恥ずかしそうに言っていた。

梨美さんのいる喫茶店に戻る。彼女は女性編集者に自身の窮状を訴えていた。

「親に経済的に依存していて、私ひとりでは自立は絶対にできない。悩みだすと、結局死ぬしかないってなる。女性の貧困記事を見つけたのも、私が生きるヒントみたいなのが欲しくて検索したから。自分と同じような人を探しているんです。自分と同じような人がどう生きているのか参考にしたくて。先週、7万円のときは自殺未遂しちゃったし……本当に苦しい」

左腕にはリストカットの痕が残る

彼女は慢性的な「希死念慮」と呼ばれる自殺願望を抱える。うつで気持ちが落ち込んだとき、なにかが起こってショックを受けたりすると、苦痛で死んでしまいたいと思う。そして実行してしまう。

先週、2段ベッドにロープをくくりつけて首を吊る。理由は、9月に支払い能力がないのにクレジットカード払いで買い物をしたことだ。収入のない彼女は自分の銀行口座が2万円を超えることはないので、当然、引き落としはできない。翌週クレジット会社から振り込み用紙が届き、お母さんに買い物がバレた。「うちは大変なんだから、買い物はしないで!」と、親にくぎを刺されたことが落ち込んだ理由だ。

怒られた数時間後、死のうと首を吊る。途中、苦しくなってやめる。もう10年以上前から何度も繰り返していること、いつもの日常だった。

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