「一人旅歓迎」の温泉宿はなぜ増えているのか 一部の旅館が気づいた、意外と多いメリット

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栃尾又温泉は昔ながらの湯治場で、「自在館」、「神風館」、「宝巌堂」の3軒の木造宿が肩を寄せ合う。いずれの宿も自在館を本家とする親戚筋で、「したの湯」「うえの湯」「おくの湯」の3つの共同湯を3軒が共同で守り、供用している。古くから、栃尾又温泉は子宝に恵まれると伝えられ、建物の合間にある薬師堂には、祈願が成就した方が持参したキューピー人形が所狭しと並んでいる。

栃尾又温泉の特徴といえば、その温泉抜きには語れない。したの湯の真下から湧き出る天然ラジウム泉は、体温と同じ37℃と低い「ぬる湯」で、源泉そのままの温度で入浴する。そのため、1時間でも平気で浸かっていることができ、入浴中は誰もが目をつぶり、静かに瞑想している。ぬる湯の隣には、加温された熱い湯の湯船もあり、ぬる湯の後に熱い湯にざぶりと浸かってから上がるのが栃尾又の伝統的な入浴法だ。

先に熱い湯に入ると、ぬる湯はとても冷たく感じるので、ぬる湯から入るのがコツだ。

3軒の宿が守る共同湯のうちの1つ「したの湯」(自在館内)

今日の宿泊は「宝巌堂(ほうがんどう)」。ご夫婦が営む8室の小さな宿だ。宝巌堂は昔からの伝統的な湯治宿だったが、少し前に全面改装し、宿泊単価もかつての倍にあたる現在の価格(1万8000円+税)になった。

湯治場の時代から一人旅を歓迎していた

なぜ宝巌堂を選んだかといえば、湯治場の時代から一人旅を歓迎してくれるからだ。一人旅優先の客室も3室ある。平日のみならず土曜日でも宿泊できる。そのため、一年を通して一人旅が多く、ご主人にうかがうと半数以上が一人旅とのこと。

この日、私以外も皆さん一人旅。食事は、夕朝食とも旬の自然食材を使い、手をかけて調理してくれたもので、ふだんジャンキーな食事が多い身にとってはとてもうれしい。そして、米はさすがにうまい。食事場所も、食堂でも、部屋でも気の向くまま。何とも気を張らずに滞在でき、かつ館内は現代風のなかにも田舎らしさが漂っていて、とても居心地がいい。食事の時間のみ、18時と8時と決まっているが、すべての客がその時間に食堂に集まってくる。

なぜ、宝巌堂は一人旅を歓迎するのか。若女将の星智子さんが教えてくれた。

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