日本人にはまず作れない「東京ガイド」の中身 東京愛にあふれた英国人が自費出版で制作
プロジェクトを通じて、日本や東京に対する見方にも変化があったという。「僕が住んでいたほとんどの間、日本はずっと景気が悪くて、経済的にも政治的にも変化が起きないような停滞感に襲われていた。だけど『People Make Places』を通じて、日本の中小企業が育むすばらしい創造性を垣間見ることができた。ひょっとしたらソニーのような大企業はかつての姿から変わってしまったのかもしれないが、日本はまだ(社会に)驚くような貢献ができる会社がたくさんある」。
東京に住んで15年。「東京に対する感覚はすでに日本人と同じになりかけていた」という、スプレックリー氏だが、今回のプロジェクトを通じて再び東京がエキサイティングな場所に映るようになった。ただし、スプレックリー氏にとって魅力的に映るのは、桜や怪獣などのザ・ニッポン的な「アトラクション」ではない。
東京が「何度も訪れたい街」になるには
「確かに初めて日本を訪れる人にとっては、桜や富士山などは非常に魅力的なコンテンツだと思う。だが、日本にはそれ以上にリッチで深い文化がある。あまりにこういう側面ばかり押し出しすぎると、日本は実際に人が住んでいる、いきいきとした社会というより、ディズニーランド的なアトラクションみたいな国のようにとらえられてしまう。
パリやロンドン、ニューヨークといった世界のすばらしい都市を多くの人が何度も訪れるのは、何もバッキンガム宮殿に何度も足を運びたいからじゃない。何度も行きたくなるのは、その街の雰囲気やエネルギーが感じられるからで、行く度にいろいろなレベルからその都市にかかわって、味わうことができるからだ。東京にもそういう街になれる素質が間違いなくある。観光客はアトラクションのためには戻ってこないが、リアルな人や体験とかかわりを持つためになら戻ってくる」
確かに、外国人観光客の関心は買い物や観光から、より深く日本の文化にかかわったり、生活を体験したりすることに移っている。が、そうした体験を提供するにも、日本人はつい、「外国人だったらこういうのがお好きでしょ」となりがちだ。『People Make Places』は小規模な観光ガイドかもしれないが、ここには外国人が見た(または見てみたい)やりすぎない、本当の日本の生活や日本人の考え方が詰まっている。そこから、日本人が発見できることや学べることが少なからずあるはずだ。
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