トランプ相場で市場は無防備になっている 「イタリア」通過後、「思わぬ反撃」の可能性も

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2016年の主要な政治イベントは、これで全て終わった。市場の次の関心は、トランプ次期大統領とFRB(米連邦準備理事会)の関係に移っていく可能性が高い。FOMC(連邦公開市場委員会)を来週13-14日に控え、当局者の金融政策に関する発言が禁止される「ブラックアウト期間」入り直前の5日、FOMCの主要メンバーである地区連銀総裁からは、トランプ次期大統領が掲げる財政政策を念頭に置いた発言が相次いだ。

注目は、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の「財政政策がさらに景気拡張的となり、経済活動を支援するとしたら、恐らく金融当局は長期的に緩和の度合いを弱めるペースを若干加速させるだろう」という発言だ。

FRBからの「思わぬカウンター」に注意

すでに12月のFOMCでの利上げは確実視されている。よって、利上げが金融市場に大きな影響を及ぼすことは考えにくい。問題は、積極財政を掲げるトランプ次期大統領の政策に対する期待を背景とした株高、不動産価格の上昇に対して、「FRBがとこまで寛容でいられるか」である。

トランプ次期大統領の経済政策に関しては、実現性に疑問符を投げ掛ける専門家も多い。確かに実現にはさまざまな障害がありそうだが、それを実際に測れるのはトランプ大統領が誕生する1月20日以降になる。それまでの1カ月間は、トランプ大統領の経済政策が実現するかどうかは「将来の懸念材料」に過ぎず、今ある「期待」のほうが、市場を動かすエネルギーとして、はるかに大きいといえる。

だが、期待先行で株価上昇と不動産価格が続くとしたら、「Behind the curve(政策が後手に回ること)」のリスクについて繰り返し言及してきたイエレンFRB議長が、どのような意向を示すのかが注目されるところだ。

もし、イエレン議長がトランプ次期大統領の政策によるインフレリスクに対して強い警戒感を抱いているなら、「今後の利上げピッチが市場予想を上回るものになる可能性がある」と示唆しても、おかしくない。

英国のEU離脱とトランプ大統領決定という2つの「大どんでん返し」を乗り越えてきた市場にとって、しばらく懸念する材料は見当たらない。逆に言えば、ボクシングでいえば、「ガード」を下げた市場が気を付けなければならないことは、FRBからのカウンターだといえそうだ。

近藤 駿介 金融・経済評論家/コラムニスト

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こんどう しゅんすけ / Shunsuke Kondo

1957年東京生まれ、早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、総合建設会社勤務を経て、31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社。株式、債券、先物・オプション取引等を担当した後、野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍。再び、野村アセットに戻ってからは、担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出されるなどファンドマネージャーとして活躍。その他、運用責任者として、日本初の上場投資信託(ETF)である「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ、1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーとなる。現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく、合同会社アナザーステージを立ち上げ、会長兼CEOとして、一般向けの金融セミナーや投資セミナーなど専門家向けセミナー等も開催中。自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は、個人投資家から圧倒的な支持を得る。

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