日本株はいったん下落する可能性がある 当面の株価のピークは1万8900円まで?

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さらに14日には日銀短観(12月調査)が公表される。日銀短観では大企業・製造業の想定為替レート(9月調査時点では1ドル=108円程度)に注目が集まる。ただ、国内株式市場ではすでに自動車株中心に買われており、輸出採算の改善期待も株価に織り込まれつつある。

株価に影響を与える為替はどうなるだろうか。15日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が発表になる。すでに金融市場では米FOMCにおいて0.25%程度の利上げは織り込み済みだ。米利上げ決定後は材料出尽くし感から、一時的にドル安円高へ反転することもありそうだ。ドル円において長期投資家の売買コストとされる200日線や52週線は106~108円台だ。

ただ、今回利上げがあったとして、2015年末の米利上げと異なるのは、原油価格が持ち直している点だ。石油輸出国機構(OPEC)の減産合意によって、WTI原油先物は51ドル台まで反発している。2016年前半に危惧された産油国の財政悪化懸念がやや後退、再び政府系ファンド(SWF)の投資余力が徐々に改善している。

日経平均株価の上値メドは1万8600~1万8900円

2016年の日経平均株価はダブルボトム(2月と6月安値の1万4952円)を完成させた。この2つの安値に対する4月戻り高値1万7572円をネックラインと呼び、この水準を終値で上回ると、売り方による損失限定の買い戻し等が重なるため、商いが増大する。

実際、11月下旬の東証株価指数(TOPIX)が12連騰となる等、踏み上げの特徴といえる急騰相場もうかがえた。一方で、日経平均株価は戻りメドに近づきつつある。2015年の高値2万0868円から2016年安値1万4952円の下げ幅に対する61.8%戻し(黄金分割比率をもとにした計算値)や、3分の2戻しの株価が1万8608~1万8915円だ。ここらへんまでの価格は、いったん自律反発の範囲内とされている。12月1日の日経平均株価は一時1万8746円まで騰勢を強めていたものの、大引けにかけて1万8513円へ失速した。

筆者は12月の日経平均株価がいったん反落すると見る。パターン分析において、買いが一巡したのち商いが縮小すると、ダブルボトムのネックライン(今回の場合は1万7572円)前後まで下げる傾向がみられる。また、足元では日経平均が高値更新するなか、東証1部売買代金が縮小する「逆行現象」もうかがえる。11月上旬は3兆円台後半の大商いに達していたものの、12月上旬は2兆円台前半へ伸び悩んでいる。これは市場参加者が上値追いに警戒しつつ、積極的な買いを控えている証左といえる。

海外勢は足元、3週連続で計1.2兆円近く日本株を買い越している。ただ、12月中旬以降はクリスマス休暇に入ることから、米利上げ決定前に海外ファンドが利益確定売りをうかがっていることも考えられる。2015年度の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)運用実績が5.3兆円の赤字に落ち込んだことを揶揄されたが、GPIFは東証1部時価総額が500兆円(≒GDP1倍割れ)を下回る局面では日本株を買い続けた。

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結果的に、2016年7-9月では2.3兆円の黒字に転じている。その年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は5週連続で売り越しているうえ、日銀のETF買い入れも一服している。

トランプ相場の勢いに煽られ、日本株も楽観ムードに包まれつつある。ただ足元の東証1部時価総額は550兆円を上回っていることから、海外情勢や為替動向次第ではいったん調整もありそうだ。一方で、バリュー面を重視する年金基金等は、慎重な投資判断の下、押し目買いのタイミングを計っていると思われる。

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中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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