ウッズは日本メーカーのボールを選ぶのか ナイキの用具撤退で、復帰戦での選択に注目

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「ボールこそが"最も重要なクラブ"だからね」

笑顔でそう力説したウッズがアルバニーGCの練習場で打っているボールは、日本のメーカー、ブリヂストンのボールだ(同社のツアーB330S)。ウッズがこのボールをテーラーメイドのドライバーで打ち出すと、トラックマンが示す飛距離は軽々300ヤードを超える。

ウッズの番記者たちは「これだけのパワーがあれば、ウッズの活躍は復帰戦から期待できる」とうなずき、ウッズ自身もスイング、あるいはアプローチのイップス(当たり前にできていた動作が、精神面などの要因によってできなくなること)などとささやかれた諸説を打ち消すように「僕は死んでない」「準備は万端」と、ご満悦の笑顔を披露している。

今季開幕戦のセイフウエイオープンをドタキャンしてから6週間プラス数日間、ウッズのキャディを務めるジョー・ラカバはウッズの自宅があるフロリダ州ジュピーターへ何度も足を運び、今週のヒーロー・ワールド・チャレンジでの「今度こその復帰」に備える手伝いをしたそうだ。

練習ラウンドの際は乗用カートに乗らず、できる限り歩いて回るよう、ラカバがウッズにアドバイス。最初は9ホールから始め、少しずつホール数を増やしながら大地を踏みしめてラウンドすることに慣れていき、18ホールをしっかり歩いて回れるようになったという。

しかし、11月のほぼ全部を使ってそんなリハビリをしていたのであれば、そもそも10月のセイフウエイオープンで戦線復帰することは到底無理であり、まったくの無茶だったということになる。

「ウッズ復帰」をめぐり、にぎわうゴルフ界

一番そう感じているのは、どうやらウッズ自身のようだ。

「試合への復帰をどうせ1年以上も待ったのだから、今さら焦ることはない。そう自分に言い聞かせてセイフウエイオープンのWD(棄権)を決めたけど、あれは正しい判断だった。今は準備万端。レディ・トゥ・ゴーだ」

そんなウッズを番記者たちが笑顔で見守る一方で、さらなるうわさや、さまざまな説も飛び交っている。

今週も大会初日にティオフするまではウッズが本当に試合でプレーするという保証はないと警戒する向きもある。復帰戦をセイフウエイオープンからヒーロー・ワールド・チャレンジに変更したのは、"ウッズの大会"の注目度を上げるための商魂の賜物だと見る向きもある。

商魂といえば、1年3か月以上のブランクを経て復帰戦を迎えるウッズには新たな契約まで舞い込んでいる。公式発表はされていないが、米スポーツメディア大手のESPN.COMによれば、ウッズはエナジードリンクのモンスターエナジーと新契約を結び、今後はそのロゴが付されたゴルフバッグを使用するという。

それを知って「もはやタイガーの最大の関心はゴルフよりビジネス」と嘆く人々もいる。世間は「なんだかんだ」とかまびすしい。だが、なんであれ「タイガー・ウッズ復帰」が米ゴルフ界のみならず、世界の注目を集めていることは間違いない。

舩越 園子 在米ゴルフジャーナリスト

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ふなこし そのこ / Sonoko Funakoshi

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。93年渡米。在米ゴルフジャーナリストとして新聞、雑誌、ウエブサイト等への執筆に加え、講演やテレビ、ラジオにも活動の範囲を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。アトランタ、フロリダ、ニューヨークを経て、現在はロサンゼルス在住。
 

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