セブンとファミマの簡単には詰まらない「差」 経営分析の一歩は誰でも割り算で踏み出せる
しかし、これも割り算を使えば、まったく違う景色が見えてきます。
まず、両者の売上高をそれぞれの店舗数で割り、1店当たりの売上高を出します。マックは前年度末現在2956店舗で1店当たり約6400万円、モスは1370店舗で1店当たり約5200万円。そしてこの数字を365日で割って日販を計算すると、マック17万6000円に対し、モス14万2000円となります。
「なんだ、やっぱりマックの方が多いじゃないか」と思われた方、大事なのはここからです。さきほどのコンビニの例では、営業時間はすべて24時間で計算できましたが、ファストフードショップの営業時間は店舗によって異なります。両社のホームページから店舗検索してみると、マックは東京だけで24時間営業の店舗が200店もあるのに対し、モスの24時間対応店は全国でも2店しかヒットしませんでした。
調べてみると、マックの24時間営業店は2015年3月末現在で888店あります。全店舗中約3割が24時間営業になる計算です。また、店舗検索でランダムに店舗の営業時間を調べてみると、全体的にマックの営業時間はモスより1~2時間長い印象です。これらの条件を踏まえて、全店の平均営業時間をマック20時間、モス16時間と仮定して日販額を割り出すと、マックの1時間当たり売上高が8800円になるのに対し、モスは8875円となり、何とほぼ変わらなくなります。
身近な仕事に役立つ割り算
このように、気が遠くなるような大きい数字でも、割り算を使って肌感覚で分かる単位まで落とし込めば、興味深い企業分析ができるようになります。また、大企業だけではなく、割り算を使った経営分析は自社や取引先の分析でも役に立ちます。
私がおすすめするのは、自社や取引先の年間売上高を12で割って月商を把握すること。そしてその数字を貸借対照表の売掛金や棚卸資産と比べることです。通常、企業間取引は当月締め、翌月末払いというケースが多いと思いますので、理屈では期末に売掛金は1~2カ月分程度が残っているのが普通です。これがもし、4カ月分以上計上されていれば、現金回収がルーズ、取引先が経営不振、など資金繰りに問題が生じている可能性があります。ひどい場合は、架空売上を計上していることも考えられます。
また、業種にもよりますが、在庫である棚卸資産はどんなに長く滞留しても月商2カ月分が限度でしょう。これを超えて過剰に多い場合は在庫管理がルーズ、在庫評価を適正に行っていない、などの問題が生じているおそれがあります。また、これもひどいケースでは架空在庫を計上して利益を水増ししていることも考えられます。
数字に苦手意識を持つビジネスマン・経営者は多いもの。会計用語は難しく、財務諸表は訳のわからない数字の海で見るのも嫌だ、という気持ちは理解できます。私もかつてはそうでしたから。しかし、冒頭で述べたように企業分析指標はすべて、「何かを分子に置いて、何かを分母に置く」割り算に過ぎません。
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