セブンとファミマの簡単には詰まらない「差」 経営分析の一歩は誰でも割り算で踏み出せる
まず、14万円をコンビニの1日の営業時間である24時間で割ります。すると1時間当たりの売上高の差は5833円と計算できます。
両社の来店客数は公表されていないので、さらに細かい数字を正確に割り出すのは難しいものの、業界団体の公表数字から一定程度は類推できることがあります。日本フランチャイズチェーン協会が発表している「コンビニエンスストア統計調査年間集計」を頼りにしてみましょう。
同調査によれば、日本のコンビニエンスストアの店舗数は2015年末で5万3544店。2015年の来店客数は延べ167億3089万人です。ここから1店舗当たりの来店者数を割り出すと約31万2000人となります。
さらにこれを1日当たり(365日で割る)、1時間当たり(24時間で割る)で計算すると全国的にコンビニには1時間当たり約36人が来店している計算となります。実際には2陣営の来店者数には差があるはずですが、全国平均値を計算材料として、セブンとファミマの1時間当たり売り上げ5833円の差を36人で割ってみると1人当たり162円という数字が出てきます。つまり、セブンとファミマの差は、来店客1人当たりに直せば、飲み物1本あるいはスイーツ1個を余分に買わせているかどうかの差である、と考えることができます。
別の見方もできます。コンビニエンスストア統計調査年間集計によると、2015年にコンビニへ来店したお客の平均単価は約609円。1時間当たり売り上げ5833円をこの平均単価で割ってみると、1時間当たりの来客数の差は9~10人となります。店舗数で肉薄する2陣営の差は、小さな積み上げが大きく左右していることが分かります。この差は簡単には詰まらないでしょう。
これ以外にも割り算はさまざまな経営分析に使えます。例えば、よく耳にする経営指標である売上高営業利益率は、営業利益を分子、売上高を分母に置いただけの割り算です。自己資本比率は、自己資本を分子、総資本を分母に置いただけの割り算です。このように、経営の良し悪しを判断する指標はすべからく、「何かを分子に置いて、何かを分母に置く」割り算に過ぎないのです。
また、どの数字を分子に置いて、どの数字を分母に置くか、ルールで決まっているわけでもありません。56もある分析指標ですが、ある企業の実態を表すのにどれもしっくりこなければ、自分で数字を組み合わせて新しい分析指標を作っても、まったく問題ありません。
実際、企業分析において、自由な発想で数字を拾って割り算してみると、あいまいだったものがはっきり見えたり、思わぬ発見があったりします。
マックはすでにモスに抜かれている?
コンビニ業界に劣らずマスコミが取り上げる機会が多いのがファストフード業界です。特に日本マクドナルドは、良きにつけ悪しきにつけ話題に上ることが多い企業です。
同社の前年度(2015年度)の売上高は約1894億円でした。一方、競合のモスバーガーを運営するモスフードサービスの売上高は約711億円で、マックの4割にも満たない数字です。近年、鶏肉偽装や異物混入問題があったとはいえ、この数字を見るかぎり依然としてマックは“ファストフード界のガリバー”と言えそうです。
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