日本株は、一時的に下落するかもしれない さすがに今のドル高には「過熱感」がある

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一方、日経平均はどうだろうか。現在の乖離率は3.93%である。乖離幅が大きくなっていることは間違いないが、日経平均の場合、5%台の乖離率は年に数回見られる。

今年は、7月19日(5.97%)、7月20日(5.49%)、7月21日(6.06%)、4月22日(5.94%)、3月14日(5.48%)と5回あった。日経平均の乖離率が5%台に達することを想定すると、25日移動平均線1万7286円+5%=1万8195円となる。手が届きそうな状況だが、足元の上昇のエンジンだったドル高円安が一服となれば、さすがに日経平均の動きも重くなりそうだ。

実際、先週末の日経平均は、為替市場でドル高円安が加速しているにもかかわらず、1万8000円レベルでのモミ合いとなり安値引け(終値がもっとも安い状態)となった。投資家心理を一気に改善させた銀行株の上げが止まったことも影響している。

・2週間弱という急ピッチなドル高
 ・約10円という上げ幅
 ・2年ぶりに25日移動平均線との5%乖離

などを考慮すると、ドル独歩高、つまりドル高円安基調はいったん一服する可能性がある。ただ、調整は短期的なものに留まると考える。投機筋のポジションでは、円買いが大幅に減少していることから、ドル高円安という大きな方向性は変わらないと想定する。

「ドル指数」でわかる「パラダイムシフト」とは

また、先週末の「ドル指数」は101.480と03年4月7日(101.810)の水準まで上昇している。この指数は、主要国通貨(ユーロ、円、ポンドなど)に対するドルの総合的な価値を指数化したもので、ドルの強弱を測ることができる。2015年以降の壁だった100という水準を上抜けたことから、ドルはこれまで10数年のレンジを逸脱。「パラダイムシフト」(従来の枠組みや見方が大きく変わること)といった現象が起こりつつある。

加えて、外国人投資家による買い方が変化したことも好材料と言えよう。11月第2週は先物と現物で合計6388億円買い越している。詳細を確認すると、先物が2380億円、現物が4006億円。そして、先物でもTOPIX型を2111億円買っている。アベノミクス相場のスタート時、外国人投資家はTOPIX型の先物を大量に購入し長期間保有していた。外国人投資家がかつてのようなTOPIX型の先物を買い続けるのであれば、この相場はしっかりとしたものとなろう。

こうした地合いを考慮すると中長期的なドル高円安、日本株高のトレンドは変わらないと考える。ドル円の調整は1週間から2週間ほどの短期間で済むだろう。こうした背景から今週の日経平均は上げ一服と想定する。終値ベースの年初来高値1万8450円の更新は12月相場に持ち越しとなろう。なお、このシナリオが大きく崩れるとすれば、トランプ氏が選挙期間中のスタイルに戻ることだ。例えば、ツイッターで「いい人を演じるのはやめた」などと書き込まれると、どうしようもない。今のトランプ氏の姿が彼本来の姿だと信じたい。
 

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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