“一匹狼”のホンダが、GMと組んだ事情 燃料電池車で技術提携結ぶ

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米国で会見したホンダ・岩村哲夫副社長(右)とGM・スティーブン・ガースキー副会長、報道陣も殺到した(ホンダ提供)

ホンダは、「あらゆる提携の可能性は常にある」(ホンダ・伊東孝紳社長)と他社との連携を否定していなかったものの、ある開発幹部は「FCEV開発ではホンダは最先端を行っており、他社と提携する必要性はない」と言及。過去の経緯もあり、相対的に独立志向が強いと見なされていた。

改めてFCEVとは、酸素と水素の化学反応で電気を取り出す燃料電池(FC)で動かすモーター動力源とした電気自動車(EV)。排出するのは「水」だけで“究極のエコカー”“究極の環境自動車”などとも呼ばれる。FCEVは自動車としてはすでに基本的な技術は確立されている。

だが、普及に向けては大きな課題がある。まずはコストの問題だ。現在、各社がリース販売や実験で用いている車両は、いずれも1台当たり億円単位のコストがかかっているとされ、大幅なコストダウンができなければ、普及はとうてい望めない。

莫大な投資負担を軽減、技術も補完

今回、ホンダがGMとの共同開発に踏み切った狙いは、FCEVの開発費負担を軽減するとともに、試作車段階も含めた部材調達でのスケールメリット、不得意な技術の補完などにあるようだ。ホンダは1990年代にGM車向けにV6エンジンを供給したり、カーテレマティクスの分野で協業したりと、両社の技術部門を中心としたもともとの交流関係も背景にあった。

両社が共同開発を手掛けるのは、酸素と水素を反応させるFCスタックと、水素を搭載する高圧水素タンクの2つの分野。いずれもFCEVに特有の部品で、それゆえ性能とコストを左右する重要部品だ。FCEVの技術では、化学分野でGMが、装置の小型化などのメカ技術ではホンダが強みを持つ。共同開発に当たっては、両社がそれぞれ保有するFCEVに関する知的所有権を互いに開示し、活用する。

ホンダはすでに独自開発の次世代FCEVを2015年に市販化することを発表している。共同開発技術を用いたFCEVは、2020年に「手ごろな価格」(ホンダ・岩村哲夫副社長)で、次々世代のFCEVとして投入する。

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