“一匹狼”のホンダが、GMと組んだ事情 燃料電池車で技術提携結ぶ

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本格実用化に向け、にわかに動きが激しくなった感のあるFCEVだが、ここに至るまでなかなか長い道のりがある。FCEVは、1990年代に独ダイムラーが本格的な開発に着手したことをきっかけに、主要各メーカーも開発に着手、日本でもトヨタ、ホンダが意欲的に開発を行ってきた。2000年代初頭には実験車両の投入が相次ぎ、2010年代に立ち上がる次世代環境自動車として期待が集まった。

ただ、その後はFCEVの性能向上やコストダウンが進まず、また水素供給インフラの未整備もあり、普及への道のりが不透明になっていた。リチウムイオン電池の高性能化・低価格化が進んだ2000年代後半になるとバッテリーのみの電力で動くEVへの注目度ががぜん高まり、FCEVは日陰の存在になっていった。

日産「リーフ」の不振が示したEVの限界

一方、本格EVで先陣を切った日産のリーフが、実用上100キロメートルにも達しない航続距離の短さや、急速充電でも30分はかかる充電時間の長さから、販売が伸び悩み、EVの限界がクローズアップされてくると、この2つの問題がないFCEVに再び注目が集まるようになってきた。

FCEVに多額の開発投資をしてきた各社からしてみれば、注目度が回復したこのチャンスに、今度こそ、本格普及に向けた足取りを確かなものにしておきたいところ。そうした中で、これまで以上に開発・コストダウンを加速させるには、リソースを集約し、調達メリットを出せる提携に踏み切るのは自然な流れといえそうだ。

また、FCEVの普及に向けてコストダウン以上にアキレス腱となるのが、水素供給インフラの整備だ。ガソリンスタンドの整備が、1件当たり数千万~1億円なのに対し、水素スタンドの設置には1件当たり数億円はかかる。水素スタンドの整備を進めるには、当初は大きな政策的な支援が不可欠だ。またグローバルで普及させるには、車両だけでなくインフラ面でも規格や安全基準の国際調和も求められる。こうした政策に働き掛けるためには、1社単独で臨むよりも有力企業同士が足並みを揃えたほうが効果的だろう。

これだけスケールが大きく、費用も時間も膨大にかかる話だけに、これまで“一匹狼”を貫いてきたホンダも、さすがに単独での展開を続けることにリスクを感じたというところだろうか。

GM-ホンダ連合を含め、各陣営、現代自動車とも、FCEVの一般市販化と量産化のターゲットを2015~2020年と定めている。“究極の環境自動車”になるのか、はたまた夢で終わるのか。FCEVの本格普及を目指して、各社のアクセルも全開になりつつある。

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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