「銭荒」と、高めの金利を容認する政府 景気・経済観測(中国)

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ただし、「理財商品」には「流動性リスク」があると指摘されている。「理財商品」の償還期間は数カ月と短く、償還時に必要となる資金はインターバンク市場での短期借り入れによって手当されることが多いが、投融資先である不動産開発会社などからの資金回収期間は、一般に中長期だからだ。

このように期間構造にミスマッチがあると、インターバンク市場で短期金利が高騰した場合、銀行はコスト高で償還資金を調達できなくなるおそれがある。さらには、「理財商品」を通じて「信用リスク」が高い先に資金が流れていることも懸念の種とされている。

これらのリスクがあることから、中国の金融当局は野放図な「理財商品」の拡大を警戒し、規制を強化してきた。しかし、規制をかいくぐる動きが出たりするなど、関係当局は「理財商品」に対する監督管理に手を焼いてきた。

短期金利はやや高めの水準が続く

そしてその最中に短期金利が上昇し、流動性リスクが高まったわけだが、中国人民銀行は2%台というパニック前の水準にまで短期金利を急いで抑えようとしているようにはみえない。短期金利が高騰した6月第3週にあっても、公開市場操作による資金放出量が6月第1週、第2週より絞られているなど、中国人民銀行がなりふり構わず流動性を大量供給しているわけではないからだ。

折しも6月下旬は、「理財商品」の大量償還期であった。フィッチ・レーティングスによると、その償還額は6月最後の10日間だけで1.5兆元に達したもようである。その時期に金利を高めに据え置くことは、経営管理の甘い銀行に対して流動性リスクの怖さを強く印象づけることになる。中国人民銀行、中国政府が危機を逆手にとって一種の教育効果を狙った可能性は否めない

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