JR北海道を救うには「値上げ」こそが重要だ

利用者のためを考えるなら路線廃止よりいい

 しかし、収支均衡だけでは、まだ足りない。前述のように、2030年度以降は毎年90億円を国に返済しなければならないからだ。そこで今度は、目標とする旅客運輸収入も、さらに90億円増やした907億8668万9000円として試算してみよう。

この試算では、1.35倍の運賃値上げが必要になる。つまり、札幌-新千歳空港間の定期外運賃は1357.7円になる。

さらに過酷な条件として、運用難により経営安定基金の運用益はゼロとし、そのうえで毎年90億円返済することを仮定してみよう。このケースでは、営業収支を均衡させるための旅客運輸収入は1249億5968万9000円となる。その場合に必要な運賃は現行の1.86倍だ。札幌−新千歳空港間の定期外運賃は1868.8円にハネ上がる。

安い運賃を残すのか、JR北海道を残すのか

試算を振り返ると、定期外運賃は最初に挙げた1.22倍でも相当に上昇したように感じられるはずだ。一方で、定期運賃は通勤定期、通学定期とも、ほかの交通手段と比較すれば十分に割安だろう。

現行の運賃制度の場合、通勤定期乗車券で幹線に16.5キロメートル乗車したときの定期運賃は1カ月で1万1520円である。16.5キロメートル乗車したときの幹線の定期外運賃は360円で、360円×30日×2回=2万1600円と比較すると割引率は47%と極めて高い。

3番目の運用益を期待しない条件の場合、幹線に16.5キロメートル乗車した際の1回当たりの通勤定期の運賃は、現行の1.86倍である294.7円となる。この金額をもとにした1カ月の通勤定期乗車券の運賃は1万7682円だ。定期外運賃(現行の1.86倍で計算した場合の1カ月分は4万176円=360円×1.86倍×30日×2回)に対する割引率は56%にもおよび、現行の運賃制度よりさらにおトクになってしまう。

バス事業者の場合、通勤定期運賃の割引率は25%程度である。3番目の条件はJR北海道にとって、もはや緊急事態だ。通勤定期運賃の割引率は25%もあれば御の字だろう。

定期運賃にも手を付けなければならないことは明らかなのではないか。しかも、この試算では利用者数は2013年度と同じであることを前提としており、人口減少や運賃値上げによる影響を考慮していない。状況は、もっと深刻だ。

今後は18日に明らかにされた通り、路線廃止や上下分離が地元との交渉の軸になるだろうが、運賃値上げを組み合わせることで存続できる路線もあるはずだ。現行の運賃認可制度のもとで改定が難しければ、冬季割増料金や、設備の改修が必要な線区に対しては鉄道整備料金といった各種料金の導入も検討されていいのではないか。いずれにせよ、JR北海道の営業収支均衡化に向けての議論が活発に行われることを期待したい。

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