JR北海道を救うには「値上げ」こそが重要だ 利用者のためを考えるなら路線廃止よりいい

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実はJR北海道の営業費用は、ほぼ限界まで削減し尽くされている。鉄道事業に関する国のデータがそろっている2013年度で比較してみよう。

この年、JR北海道の営業費用は1159億5968万9000円だった。営業キロは2499.8キロメートルなので、営業キロ1キロメートル当たりの営業費用は4万6388円ということになる。

これに対してJR東日本・JR東海・JR西日本のJR本州3社は合計で営業費用が3兆1226億7427万2000円だった。3社合計の営業キロが合計1万4499.1キロメートルなので、営業キロ1キロメートル当たりの営業費用は21万5370円だ。JR北海道の営業キロ1キロメートル当たりの営業費用は、JR本州3社と比べると5分の1に過ぎないわけだ。

無理をすれば、さらに減らすこともできるだろうが、軌道の保守は必要最小限になるため、安全のためには列車の速度を落とさなくてはならないだろうし、路線によっては雪が降っても除雪ができず、冬季運休も検討せざるをえないだろう。

もちろん、18日に会社側が正式に発表したように、利用者が少ない区間の営業廃止や上下分離はきわめて有効だ。とはいえ、沿線自治体からの反対にも直面するだろう。確実に実施できるかどうかは不透明である。

運賃の値上げも必要だ

つまり、JR北海道が存続していくためには営業廃止や上下分離だけでなく、増収、それも利用者増ではなく運賃の値上げによる増収がきわめて重要な手段と言っていいだろう。

だが、運賃の改定は非常に評判が悪いうえ、現実にはJR北海道の営業収支を均衡させる運賃を国が認可することはまずない。JR旅客会社の運賃は総括原価方式の下での上限価格制を採用し、基準となる単価やコストはJR旅客会社同士で比較するヤードスティック方式を採り入れているからだ。

とはいえ、運賃を改定できなければJR北海道の明日はない。では、JR北海道にとって適正な運賃とはどのような水準であろうか。2013年度の国のデータをもとに試算してみたい。

JR北海道の旅客運輸収入(2013年度)は670億7006万1000円、そして営業収益は759億1990万8000円、営業費用は1159億5968万9000円。営業損失は400億3978万1000円と巨額に上る。

ここで注目すべきは、旅客1人当たりの旅客運輸収入の内訳。料金(特急料金や特別席など)を含む定期外運賃が1003.0円あるのに対し、定期運賃は143.3円に過ぎない。そして輸送人員で41.5%に過ぎない定期外運賃の利用者による旅客運輸収入が全体の83.2%に達しているのだ。

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