「トランプ共和党」は2018年までは安定する 吉崎氏、予想失敗の米大統領選を「後講釈」

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つまり今回の選挙結果は、「格差」が問題だったとか、「隠れトランプ票」がどうのこうのといった話ではないらしい。単に民主党の支持者が家で寝ていただけなのではないか。それも前回比10%減という落ち込みであった。それで謎が解けたのだが、今回は議会選挙でも民主党が伸び悩んだ。当初の予測では、上院は民主党が多数となるはずであったのに。

ヒラリーと「恋に落ちなかった」民主党支持者たち

民主党支持者は、オバマさんを応援するほど熱心には、ヒラリーさんを応援したくはなかったようだ。メール問題の影響を受けたのかもしれないし、投票日直前に党内に緩みが出たのかもしれない。「相手がトランプなら、自分が投票しなくてもどうせ勝てる」とか。

古くから、「民主党支持者は候補者と恋に落ちる」と言われる。ジミー・カーターとかビル・クリントンとかバラク・オバマとか、支持者が恋に落ちた候補者の時の民主党は強い。でも、ウォルター・モンデールとかジョン・ケリーとかヒラリー・クリントンのときは弱い。今回もバーニー・サンダースに浮気しちゃったし。

逆に言えば、トランプ氏が新しく掘り起こしたと言われる白人ブルーカラー層の支持者はそんなに大勢いるわけではない。せいぜい数百万人といったところだろう。それでも、有効投票数1億2000万票の選挙に影響を与えるには十分な数であった。州別でみると、なるほどペンシルバニア州とフロリダ州では共和党票が有意に増えており、勝利に貢献した様子が窺える。が、畢竟その程度だ。むしろオハイオ州、ミシガン州、ウィスコンシン州などでは民主党票が大きく減っている。そっちの効果の方が、大きかったのではないか。

これも後知恵の典型だが、ヒラリーさんは米国の中西部にもっと足を運ぶべきであった。僅差で敗れたペンシルベニアとウィスコンシン州、それに現在集計中のミシガン州を併せると、選挙人は46人に及ぶ。この3州を加えると、232+46=278人で過半数を超えるので、ヒラリーさんは余裕の当選であった。この3州において、民主党票は共和党票に比してトータル10万票ほど足りなかったに過ぎない。トランプ氏の勝利は実は紙一重のものであった。

ところが彼女は、投票日の数日前まではミシガン州での世論調査も実施しなかったし、ウィスコンシン州に至っては1度も足を運んでいない。トランプ氏が「ラストベルトで勝負を懸ける」と言っていたにもかかわらず、である、確かにこれらの州は伝統的なブルーステーツ(民主党州)であったが、つくづく惜しまれる判断ミスであった。よく言うではないか。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と。

今回の米大統領選挙では、世の中全体が「ヒラリー・クリントン氏が当選」だと読んでいた。しかし議会は共和党支配が続くだろうから、つまるところ何もできませんねえ、しかも負けた側がなかなか敗北を認めないかもしれないから、最悪、泥沼化もありますわなあ、という事態をメインシナリオとしていた。このことを当欄では、ヒラリーさんが勝っても「小吉」と呼んでおったわけである。

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