トランプ大統領で金融業界は復活できるのか

金融規制緩和が国際的潮流になる可能性は?

しかしなぜトランプ氏が、ある意味マニアックな金融規制をやり玉に挙げるのだろうか。

ドッド=フランク法は、金融機関の資産、負債、資本など、あらゆる側面で網をかけるものだ。例えば、資産サイドでは、貸出の大口規制、自己勘定売買やファンド投資の原則禁止。負債サイドでは、資金状況の日次管理や、資本の上乗せ、ストレステストに基づく配当制限などなど。こうした金融の健全性を重視する規制は、金融機関に融資や投資の基準の厳格化を迫るため、企業の成長を阻害する。

90年代以降、経営する会社が何度となく経営危機に見舞われたトランプ氏は、円滑な金融機能の重要性を痛感しているはずだ。金融規制緩和を唱えた背景には、クリントン氏への対抗上の必要性や様々な支援者との関係など選挙に配慮した面もあるだろうが、厳しすぎる規制に対する疑念は本心ではないか。

「トリレンマ」で景気サイクルに合わない

それにしても、ドッド=フランク法が施行されてからわずか5年である。この法律のおかげで金融機関の健全性が保たれているという面もある。大幅改定はどこまで必要なのだろうか。

一般に、「規制」と「貸出」、「金融機関の利益」の3つの関係には、金融業界に独特の「トリレンマ」がある。トリレンマとは、3つのことがお互いに矛盾し、同時には成り立たないことを指す。例えば、国際金融の世界では、「為替レートの安定」「自由な資本移動」「独立した金融政策」の3つは同時には成立しないという「国際金融のトリレンマ」が存在する。

金融業界のトリレンマとは、「貸出やリスクテイクの拡大」、「資本力強化による健全性の向上」、「株主資本利益率(ROE)の向上」である。この3要素は原則として同時には成立しない。例えば、貸出でリスクを増やせば、ROEは上昇するかもしれないが、資本が足りなくなる可能性がある。健全性のために増資をすればROEは下がる。

この3つのバランスは、景気や世の中の趨勢(すうせい)によって変化する。金融危機後は、健全性向上が世論の要求であり、当局の至上命題だった。その時期にできた金融規制が、国際規制バーゼルⅢであり、米国のドッド=フランク法である。欧州でもCRD IV(資本要求指令第4版)という独自の規制ができた。

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