鈴木宗男氏「北方領土への誤解が多すぎる」 安倍・プーチン1215長門会談へ大きな期待

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有馬:もともと2島先行返還でも問題なかった安倍首相ですから、首相になってからも、地球儀を俯瞰する外交で、ロシアにはかなり精力を傾けてきました。

鈴木:安倍首相はお父さんの安倍晋太郎外相が日ソ関係の改善に尽力したこともあり、2012年末に首相に再度就任すると、翌年の2013年にはモスクワを訪問して交渉の活性化で合意しています。2014年には欧米とロシアの関係が冷え込む中、ソチ五輪の開会式にも出席しました。しかも、クリミア半島の問題が深刻化してからも、日ロ交渉の進展に向けて、態度を変えませんでした。クリミアの停戦合意後はそれこそ、さまざまなチャネルを通じてロシア側の出方を探ってきたわけです。

それが一つの形となって表に出たのが、2016年5月のロシアのソチでの首脳会談です。ここで安倍首相はいわゆる「新しいアプローチ」として8つの経済協力を示しました。

これにプーチン大統領はびっくりしたと思います。彼の琴線を揺さぶった。プーチン大統領はこの新しいアプローチに同意しましたが、一方で、9月2日の東方経済フォーラムへの出席を要請した。私が思うに、プーチン大統領は安倍首相の本気度を試したのです。この日は日本が無条件降伏した日です。しかし、安倍首相は即決した。

この時の会談では、安倍首相は8つのアプローチについて具体的な説明をし、エネルギー政策・医療・インフラ・環境などの分野について丁寧に説明しました。東方経済フォーラムでプーチン大統領は公の席で初めて安倍首相に「シンゾー」と呼びかけ、安倍首相も「ウラジミール」と応じましたが、これが二人の信頼関係を物語っています。

長門会談は日本とロシア双方にリスクがある

12月の長門会談は日ロ双方の国民が歓迎しにくい結果になる可能性も。その意味で安倍首相・プーチン大統領双方にリスクとなる可能性がある

有馬:ということは、12月15日の長門会談の下準備は完全だ、ということでしょうか。

鈴木:長門会談は昨日今日に考えられたわけではありません。すでに3年前の会談で安倍首相が申し出ているように、安倍首相は用意周到にスケジュールを考えています。

今、北方領土4島について言えば、大事なことは、一方的な期待感や期待値を上げないことです。外交には相手があり、お互いの名誉と尊厳がかかっています。静かな落ち着いた環境で首脳会談を行うのが一番です。

両首脳の波長がとてもあっており、しかも、両首脳は現在、国民からの高い支持率を得ています。領土や国境の画定は結局トップの決断によるしかありません。

もう一つ大事なことは、両首脳ともリスクを抱えながらの決断になるということです。1956年の日ソ共同宣言に基づいて交渉が行われると言っても、ロシア国民の約8割は「日本に領土など返す必要はない」という意見です。もしプーチン大統領がこれは義務だからなどといってカードを切ったら、いかにプーチン大統領でも大変なリスクになります。

一方、日本の安倍首相にとってもリスクがあります。今回前半でお話したように、国民の大半は、日ソ、日ロの交渉の詳細を知りません。こうしたところで安倍首相が大きな決断をするには大きなリスクがあるのです。

「1956年の日ソ共同宣言で、平和条約締結の後、歯舞・色丹の2島は引き渡されることになっているじゃないか」というのが漠然とした国民の理解かもしれません。よく「返還」と言われますが、正しい理解は、あくまでも「引き渡し」なのです。これは旧ソ連の善意で返してあげる、という意味で、「返還」ではないのです。過去の歴史を振り返るとき、「戦争でとられた領土は、戦争で取り返す」という繰り返しでした。一滴の血も流さず、領土が戻ってくるとしたら、これは大変なことなのです。落ち着いた雰囲気の中で、日本もロシアも良かったという決着を図らなければいけません。

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