JFEと神戸製鋼の財務内容を分析する 世界は鉄余り、鉄鋼業は再び「冬の時代」が到来か?

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次に、鉄鋼業の現状と先行きについて考えていきます。

業界の説明をする前に、まずは鉄鋼そのものについて、少しお話ししましょう。鉄鋼の作り方は、大きく分けて2つ。ひとつは、高炉で鉄鉱石とコークスを原料にして銑鉄を造るというものです。従来、自動車用鋼板に代表されるような高品質な製品は、この高炉からしか造ることができませんでした。

もうひとつは、鉄スクラップを電気炉(電炉)で溶かして造るものです。こちらは、高炉製の鉄よりも強度などの品質が下がるため、建設用資材のH型鋼や棒鋼などに使われる製品を造ってきました。

円安の逆風がきつい、電炉メーカー

しかし、今は電炉の性能がかなり向上してきたため、自動車用鋼板などの高品質製品もこの電炉で造れるようになってきました。3年前(2010年)、東京製鉄が自動車部品としてトヨタに電炉製の鉄を納入したことが話題になりました。しかも、高炉製の鉄より2~3割も安いのです。高炉メーカーが苦戦を強いられている背景には、こうした電炉メーカーの伸長もひとつの要因と考えられるでしょう。

ただ、電炉メーカーも厳しい状況に陥っています。その理由はいくつかあり、ひとつは円安が進んでいることで鉄スクラップの輸出が増えてしまい、国内で品薄になってしまったことで、調達価格が3割ほど値上がりしていること。もうひとつは、電力料金の値上がりによって、コストがかさんでしまっていることです。メーカーの努力だけでコストを吸収することは、非常に難しいのです。

だからと言って、製品を値上げすることも難しい。なぜかと言いますと、中国や韓国からの輸入鋼材との価格競争に負けてしまうからです。先ほども説明しましたが、電炉製の鉄は高炉製の鉄と違って、それほど付加価値が高くありませんから、海外メーカーとの品質差があまりないのです。そういう点から、値上げは命取りになるのです。

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