JFEと神戸製鋼の財務内容を分析する 世界は鉄余り、鉄鋼業は再び「冬の時代」が到来か?

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 まず「損益計算書」より、2社の「営業利益」を比べてみましょう。JFEホールディングスの398億円(JFEの決算短信8ページ参照)に対して、神戸製鋼は112億円(神戸製鋼の決算短信11ページ参照)ですから、神戸製鋼はJFEホールディングスの4分の1程度の規模だということがわかります。

ただし、残念ながら神戸製鋼は2年連続で純損失が出ています。「当期純損失」が前々期の12年3月期(平成23年4月~24年3月)は142億円、前期(平成24年4月~25年3月)は269億円計上されていますね。神戸製鋼は厳しい状況が続いているのです(それぞれ同ページを参照)。

気になる神戸製鋼の有利子負債

次に「貸借対照表」に目を向けます。JFEホールディングスの「資産合計」は、4兆1075億円。資産の有効活用の度合いを示す「資産回転率(売上高÷資産合計)」を計算しますと、0.78倍。一方、神戸製鋼の「資産合計」は2兆2269億円で、資産回転率は0.76倍ですから、資産規模は違いますが、資産回転率はほぼ同じ水準です(貸借対照表参照、JFEは6ページ神戸製鋼は9ページ)。資産の有効活用度合いという点では、両社に大きな差はありません。ただし、製造業の標準といわれる1倍程度からは、やはり少し資産効率が低いと言えます。

中長期的な安全性を示す「自己資本比率(純資産÷資産)」を計算しますと、JFEホールディングスは38.9%。この指標は、いつもお話ししているように、固定資産を多く使う製造業では20%以上あることが安全の目安になります。ですから、JFEホールディングスは十分安全水域に入っているということです。神戸製鋼は、25.6%。こちらも問題ない数字と言えるでしょう。

ただ、問題は神戸製鋼の「有利子負債」の額です。「負債の部」(同10ページ)を見てください。

「流動負債」のうち「短期借入金」が3770億円、「1年内償還予定の社債」が200億円。「固定負債」のうち「社債」が1770億円、「長期借入金」が3850億円。合計で9590億円。つまり、1兆円弱もの有利子負債を抱えているのです。「現金及び預金」が1141億円ありますが、現預金を差し引いた純額での有利子負債は8000億円以上になります。

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