「IoT」でつながったモノは「サービス」で売れ フィリップスは電球を電球として売らない

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わたしたちは、スマホで開けられるホテルの客室用の鍵を開発しました。利用者側からすれば、自分のスマホで鍵を開けられたら便利だろうなと思ったのです。

既存のサービスを壊すだけだと、かえって混乱の恐れも

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ところが、なかなか導入してくれるホテルがありません。というのも、従来のカードキーなどのシステムだと、部屋に入ってそのカードを壁に備え付けの挿入口に差し込むことで、部屋の照明やエアコンの主電源が入るという仕組みになっています。これはホテルにとってかなり重要な仕組みであり、新たにスマホで解錠するようにしてしまうと、この既存の仕組みをどうするかという問題が浮上してくるのです。

結局、客室の鍵のシステムを変更するということは、ホテルマネジメント全体をどう変えていくかという問題につながることになるのです。新設のホテルなら導入しやすいかもしれませんが、既存のホテルの場合、そのあたりまで含めた新たなサービス提供まで考えていかないと、本格的に普及に弾みが付いていかないのかなと、いう感触を持っています。

また、モノではなくサービスとして売るということに関して、「どうやって対価を得るか」という視点も重要になってきます。

いまの消費者は、例えば家電一つを買うにしても、スマホで「価格.com」を検索し、一番安い店をあっという間に探し当てる“デジタル武装”をした消費者です。価格やサービス内容についての要求レベルが非常に厳しいこの消費者を、私は「わがままな消費者」と呼んでいますが、事業者はその「消費者のわがまま」に付き合わなければならない時代です。

そこでは、支払い方法についてはできるだけ多くの方法を用意しておかなければなりません。ネット決済なら一回払いや分割払い、コンビニでの後払いもある。ましてやサービスとして売っていくのであれば、月額定額で使い放題とか従量課金とか、さまざまな方法があります。ユーザーが選択できるよういくつかの方法を用意し、その中で、どういうプライシング、料金設定にすべきかを考えていかなくてはなりません。

上司から「IoTの新規事業を考えろ」とか「IoTで既存事業を改革せよ」と命じられて苦慮しているビジネスマンがいたら、まずは自社の事業を見渡したうえで、「モノをサービス化してみる」「そのサービスの対価をどう得ていくか」という二つの視点でとらえなおしてみてください。結構いいビジネスが思い浮かぶと思います。

武下 真典 エスキュービズム取締役

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たけした まさのり / Masanori Takeshita

たけした・まさのり 1979年生まれ。大阪大学工学部卒業後、フューチャーアーキテクト入社。2008年エスキュービズム入社。小売りや外食産業の経営課題を解決するIT製品を数々リリースし、eコマースや店舗スマートデバイス部門のパッケージ導入数で業界シェア№1を獲得。2014年より現職。

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