「IoT」でつながったモノは「サービス」で売れ フィリップスは電球を電球として売らない

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人気漫画『宇宙兄弟』に登場した「UFO型の電灯」。フィリップス社の電球Hue(ヒュー)が使われているのだが、なぜHueは電球ではなく、サービスと言えるのか
「IoT」を導入しても、儲からなかったら意味がない。だが今ほとんどの企業がやっているのは「戦略なきIoT」だ。「使えるIoT」を提供するエスキュービズムの武下真典氏が、3回にわたって「企業がやってはいけないIoT」を具体例を交えてわかりやすく語る。第3回(最終回)は、IoTでつながったモノは、「そのまま“モノ”として売らず、サービスとして売れ」。どういうことだろうか。
第1回「IoT」の絶対やってはいけない落とし穴
第2回「IoT」でビッグデータとAIは絶対に必要か

フィリップスは電球を「光のソリューション」として売る

いま私たちの身の回りにIoT製品が増え始めています。冷蔵庫や炊飯器、コーヒーメーカーにもセンサーが付きはじめ、インターネットにつながるようになりました。モノが売れない成熟社会の中で、こうしたIoT製品が新しいマーケットを作っていくことになるのかもしれません。

ただ、ここで気を付けなければいけないことは、インターネットにつながったモノを、たんなる“モノ”として売ってはいけないということです。“モノ”を“サービス”として売っていかなければならないのです。

例えば、オランダに本拠を置くエレクトロニクスメーカーのフィリップスは、電球を電球としてただ売るのではなく、サービスとして売っています。Hue(ヒュー)という電球がそれです。

この電球、スマホを使って遠隔地から点灯・消灯ができるのはもちろん、明るさや色の調節も自在にできますし、映像や音楽とシンクロさせてその場の雰囲気を盛り上げることもできるというものです。つまり単なる電球ではなく、光のソリューションとして売られているわけです。

人気漫画『宇宙兄弟』の中では、主人公の兄弟が住む部屋の照明として、UFO型の電灯が描かれていました。われわれは、作者の小山宙哉先生と協力して、そのUFO型ライトを実際に開発しましたが、実は、そのときに使用したのがフィリップスのHueでした。完成した製品は、スマホを使って操作すれば、変幻自在に光を放つSFチックな雰囲気にあふれたものとなり、小山先生にも非常に気に入ってもらえました。

ただし、モノをサービスにするうえでは、「消費者に対して、既存のサービスがどのように価値を提供しているか」という仕組みをきちんと理解しておく必要があります。実は、私たちの会社にも、自戒すべきエピソードがあります。

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