急増する「買い物が面倒くさい」人のホンネ 「生活者1万人アンケート」でわかったこと

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また、パソコンでしっかりと情報収集・比較を行っていた時代には、情報量の多さや一覧性、比較容易性が評価されていたインターネット情報だが、スマートフォンの小さな画面では、スクロールしたり、画面遷移したり、複数画面を比較したりといったことは行いにくい。スマートフォン時代のインターネット情報は、より簡単で直感的に理解できるもの、共感できるものであることが求められるようになっているのだ。

いきおい、買い物情報についても「いろいろ探し回らず、パッと見て気に入ったものでいい」という感覚になってきている。数ある選択肢の中からベストな物を選ぼうとするのではなく、目についたものをよしとするかどうか、である。たとえば、今、目の前にある商品の「名前」に「感想」「使用感」「評価」などのワードを組み合わせ、実際に使ったことのあるユーザーの評価を見てみる。よいことが書いてあって、その根拠に共感できればOK、そんな簡単で感覚的な情報収集・意思決定が、スマートフォンでは行われている。

「選んでほしい」。求められる提案型消費・お任せ消費

このような「考えずに買いたい」“利便性消費”を志向する消費者には、提案型消費・お任せ消費といったアプローチが求められるだろう。顧客の希望や嗜好を聴取し、それに合ったものを選んで、提案して、届けるというアプローチである。

特に、文字情報や画像情報だけで判断しなければならないインターネット消費では、多すぎるスペック情報を自分のニーズに結びつけるのは難しい。一方で、消費者のニーズは「目の疲れないテレビ」「歩きやすいけどカチッと感があり足が細く見える靴」「年配で食通の人にも喜んでもらえるお菓子」など、ますます細分化してきている。いろいろ調べてみたが結局どれがよいかわからない、となることが多い中で、「あなたの希望を叶える商品・サービスはこれです」と、あまり考えずにすむような提案があれば、確かにラクで心地よいだろう。

消費者にとっては、多くの選択肢・情報を取捨選択しなければならないストレスから解放されたうえ、“ハズレのない”提案を楽しみに待つことができる。実際、データで見ても「自分の希望をよく聞いて、それに合った商品をひとつだけすすめてほしい」というお任せ消費志向も、ここ3年で大きく増加している。

以前は金融商品や不動産などの、専門知識が必要とされ、消費者の側に経験値がたまりにくい分野でニーズが高かった提案型消費・お任せ消費であるが、近年では本、ファッション、日本酒やワインなど、より個人の嗜好が重視される分野にまで及んでいる。消費の際の情報源としてもインターネットが大きく伸びる一方で、店頭でのコミュニケーションが依然として高い重視度を維持しているのも、このような「すすめてほしい、選んでほしい」という消費者心理が反映されているともとれる。

情報過多で消費に向けるための可処分「時間」の少ない現代、モノを選ぶ時間がない、自信がない、めんどくさいという消費者の心理・行動を理解し、それに寄り添ったアプローチが、これからのマーケティングに求められている。

松下 東子 野村総合研究所 プリンシパル

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まつした もとこ / Motoko Matsushita

野村総合研究所マーケティングサイエンスコンサルティング部、プリンシパル。入社以来、一貫して消費者の動向について研究し、企業のマーケティング戦略立案・策定支援などに関するコンサルテーションを行う。初回より「生活者1万人アンケート調査」(1997年~)の調査設計・分析に携わる。現在インサイトシグナル事業部にて、独自データとシステムによるマーケティング・広告活動の見える化に取り組んでいる。著書(共著)に『なぜ、日本人はモノを買わないのか?』『なぜ、日本人は考えずにモノを買いたいのか?』『日本の消費者は何を考えているのか?』(以上、東洋経済新報社)がある。

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