定年後の「起業」、背中を押すのは妻の役目だ 会社勤めの50代から独立を準備するには?

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私は、彼らしくない姿にイライラしていた。口先では「起業する」といっているのに、一向に行動する気配を見せない。一方で、実は自分も大学卒業後20年以上会社に勤め、その慣れた会社員生活を手放さないでいた。

「このままではいけない」と思った。ふたりで「こんな暮らしがしたいね!」と言っていた生活を手に入れようとすれば、私もきちんと向き合わなければいけない。そこで、前々から自分で考えていたことを思い切って実行することに決めた。

収入を絶ち、支えることに徹したことで夫にスイッチが

前々から考えていたこととは、70歳になっても続けられる「食」にかかわる勉強を始めることだ。これを今始めよう。ただし、夫が起業するならそれをまずは支えよう。そう考え、夫よりも先に、自ら退社することを決めた。

今から考えると、そこで夫もようやく「起業」に対して本気モードに入ったように思う。まったく未知の「起業」にむかって、情報収集をし、猛烈な勢いで準備を整えていった。会社の理念、名前、そして運営上の原理原則(借り入れはしない、特定の企業や団体のひも付きにはならない)などが、瞬く間にできていった。おそらくそれまでずっと心の中では考えていたのだと思う。

会社の登記をしたり、ロゴを決めるという人生初めてのことや、想定していた仕事が来なかったり、思わぬことから大きな仕事につながった起業当時の「悲喜こもごも」を一緒に経験した。

借金がないので、経済面でのひっ迫感はなかったものの、大した仕事がなかった半年間は、霧がかかったような不安がそれなりにあった。しかし、今はありがたいことに、夫は現役時代以上に仕事で飛び回っている。私自身もご依頼いただく仕事が出始めてきたので、一緒にいる時間は大幅に減ったが、先が見えない時に、一緒に船に乗っていた記憶は鮮明に絆として残っている。

これは一般論だが、女性の方がいざという時に腰がすわるように思う。また、地域やPTAといったいろんな集まりの場で、見ず知らずの人の中に急に放りこまれても生き抜いていくノウハウを体得している方も多いと思う。

定年という節目でパートナーが今までと違う大海にこぎ出なければならないとすれば、自分も影響を受けざるを得ない。とすれば、長年の勘で「本人にもなるべく向いている海」に船出するように仕向け、灯台のようにその船を照らすもよし、その船に一緒に乗り込んで揺られてみるのもいいのではないだろうか。

大江 加代 確定拠出年金アナリスト

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おおえ かよ / Kayo Oe

大手証券会社に22年勤務、サラリーマンの資産形成にかかわる仕事に一貫して従事。退社後、夫の経済コラムニストである大江英樹氏(株式会社 オフィス・リベルタス 代表)を妻として支える一方、確定拠出年金の専門家としてNPO確定拠出年金教育協会 理事、企業年金連合会 調査役として活動。野菜ソムリエの資格も持つ。

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