定年後の「起業」、背中を押すのは妻の役目だ 会社勤めの50代から独立を準備するには?

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子供がまだ独立していなければ、もちろん父や母として、優先すべきことがあると思う。だが、巣立った後はふたりである。パートナーとして、自分と相手の将来に向き合うしかない。

定年前の59歳でいったん「シニア社員」で残る決断

わが家の場合、夫は前出のように、大手の証券会社という非常に中途退職率の高い業界で大学卒業以来、約38年間働いていた。いわゆる「営業一筋のサラリーマン人生」で、特別な能力もスキルも持っていないと本人も私も思っていた。ただ、定年になったとしても健康で動ける以上、「働く」ということは決めていた。

そして「定年」までの生活を支える大黒柱としての「働く」という働き方ではなく、「自分が納得できること」「やりたいこと」を仕事とし、その仕事が継続できるぐらいは収入を得られるような仕事スタイルが望ましいと日頃から話していた。「起業」である。長年、金融商品を売る仕事をしていた経験を活かし、「買う側に立った情報発信をしたい」、という。

「起業」なのか、それとも、年収は約3分の1になるものの長年勤めた会社で「シニア社員」として働くか。

会社へ意思表示をする期限が刻々と近づいてくる。夫は、当時「起業するのもいいね」と口では度々言うものの、夫がやりたいという情報発信が仕事として成り立つのかどうか自信がなさそうだった。そもそも、独立してカネを稼ぐという、ビジネスの「とっかかり」さえ見えなかった。

結局、未知の世界に飛び込むという踏ん切りもつかず、「定年」まで1年という段階では、一応「シニア社員」として残るという判断をした。

だが、組織の中では「自分の仕事と権限」が明確でないと「居る」ことは可能だが、責任を全うすることができないものだ。

「シニア社員」として、夫が与えられたポジションはまさにそこが不明瞭であった(当時の大企業は法改正に合わせて雇用形態は作ったものの、組織としてどう活用するかというレベルに至っていなかった企業が少なくなかった)。

大手証券時代は、常に仕事に前向きに仕事をしてきた夫からすると、どこにエネルギーを注いでいいのかわからず、当惑しているように見えた。そして彼自身、その問題点に気づいていながら、1カ月ぐらいは自分のことなのに、見て見ぬふりをしていたように思う。

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