福島原発、終わりのない「水」との戦い 〈現地ルポ〉廃炉への遠い道のり(上)

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また、CSTタンクは原子炉と同じ海抜3メートルの低地にありながら、事故時の地震と津波でも損傷はなく、耐震性も増すという。2014年度末には建屋内のみの水循環で、全長をさらに1.3キロメートルまで短縮する計画だ。

もっとも、短縮できる配管は処理済みの汚染水が流れる部分であり、原子炉建屋からの高濃度汚染水が流れる配管についてはそのまま。その厳重な安全管理は怠れない。

難航する汚染水抑制策、地下水バイパス計画に地元反発

CSTタンク前で約15分間、説明を受けた後、再びバスに乗り、1~4号機のタービン建屋海側を南下。3号機前で空間線量はこの日最大の毎時1100マイクロシーベルト(1.1ミリシーベルト)を記録した。周辺に作業員の姿はない。猛烈な線量の高さが廃炉作業を妨げている。

バスは4号機建屋の山側に回った後、「地下水バイパス揚水井」の前を通過する。これも今回初めての公開となる。

地下水バイパスは、東電が資源エネルギー庁と一緒になって進めようとしている汚染水抑制策のひとつだ。地下水がメルトダウンした原子炉建屋に入って放射能汚染される前に、敷地山側に掘った12本の井戸(揚水井)で1日に1000トン程度くみ上げ、建屋付近の地下水位を低下させることで、建屋への地下水流入を抑える。くみ上げた地下水は一時的にタンクに貯蔵し、水質確認をしたうえで海にバイパスさせて放水する仕組み。設備的にはすぐにでも稼働できる態勢にある。

しかし、地元の漁業関係者や住民らの反発で実施は遅れそうな雲行き。東電や資源エネルギー庁は揚水井でくみ上げた地下水の水質分析結果を基に安全性を説明しているが、海洋放出による風評被害への不安や東電自身への不信感などから、十分な理解が得られていない。福島第一原発の高橋毅所長は、「厳しい意見が出たのは承知しているが、われわれとしては調べた事実を丁寧にご説明していくしかない」と話す。

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