福島原発、終わりのない「水」との戦い 〈現地ルポ〉廃炉への遠い道のり(上)
同意が得られてバイパスが稼働したとしても、建屋への地下水流入を防げるのは1日当たり100トン程度と見込まれており、全流入量の4分の1にすぎない。
どの汚染水抑制策にも残る不確実性
東電が計画している汚染水抑制策としては、①地下水バイパスに加え、②サブドレンによる水位管理、③建屋の貫通部の止水、さらに政府が設置した汚染水処理対策委員会で追加抜本策として採用された④凍土による遮水壁がある。
サブドレンというのは、建屋底部への地下水流入防止や、建屋に働く浮力の防止を目的として建屋のすぐそばに数多く設置された井戸。大震災で損傷して稼働できなくなっているが、これを復旧して建屋周辺の地下水をくみ上げることにより、建屋内の地下水流入を抑制する計画。地下水バイパスに比べ、建屋周囲の地下水位をより直接的に管理できる。2014年度半ばからの運用開始を目指しており、建屋への地下水流入量は1日当たり120トン(地下水バイパスと合わせると220トン)程度減らせると見込む。
しかし、サブドレンでくみ上げる大量の水(大震災前は1日850トン)の行き先は決まっていない。水質調査もまだで、放射能濃度によっては稼働できない可能性がある。
建屋の貫通部の止水については、建屋外壁の配管・ケーブル用の穴や扉などが地下水の流入経路になっている可能性が高いため、これら貫通部を止水して地下水の流入を抑えようというものだ。1~4号機建屋には合計で880カ所以上の外壁貫通部があり、東電はこれまでに3カ所の止水を実施している。直接的な止水効果は高いと見られるが、止水すべき個所の特定や高線量下での作業の難しさなど、技術的課題は多い。
原子炉建屋を氷の壁で囲む世界に例のない試み
凍土による遮水壁というのは、東電の対応策が予定通り実施できない場合に備えて、政府が5月末に決めた対策。建屋を囲むように遮水性の高い壁を設置し、建屋内への地下水流入を抑えるため、ゼネコン各社から粘土壁など3種類の提案が出されたが、最終的に鹿島建設の凍土方式が採用された。
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