北朝鮮経済が「社会主義」にこだわるワケ 経済制裁下でも広がる「企業責任管理制」とは
――社会主義企業責任管理制において、各企業や工場はどのような義務を国家に負うのか。
金:各企業、工場に与えられた国家的課題を無条件に遂行して、収入と支出を合わせ、国家に利益を与える。また、従業員の文化生活に責任を持ち、向上させ、さらに企業を拡大発展させるということだ。
――社会主義企業責任管理制で北朝鮮らしい点はどこか。
金:他国の管理制度とは根本的な違いがある。言葉通り、社会主義企業責任管理制は、社会主義的な企業管理制度ということ。企業の生産手段は私的所有ではなく、社会主義的所有だ。これによって、各企業・工場の活動は、国家の統一的な指導の下、徹底して進めることができる。
現在の北朝鮮では、全般的に社会主義企業責任管理制が実施されており、その効果ははっきりと出ている。たとえば、平壌326電線工場をはじめとして、多くの工場や企業所、協同農場で、社会主義企業責任管理制が完璧に実施されている。これで経済全般に目に見える成果が出ていることは間違いない。
実体経済は緩やかに成長している
以上が金所長へのインタビューである。
「経済制裁下の経済」と北朝鮮が自称するように、米国を中心とした対北朝鮮経済制裁はじわじわと拡大している。韓国統計庁は2015年の北朝鮮の経済成長率をマイナス1.1%と発表した。今年1月の核実験以降、経済制裁は強化されており、制裁が本格的に実施された4月以降の経済状況に対し、世界の北朝鮮ウオッチャーが関心を高めていた。
だが、首都平壌を中心に、北朝鮮の内部では経済制裁による影響を感じるほどの状況にはなっていないようだ。2016年9月下旬に訪朝した記者の目には、道路や施設などインフラ関連はさらに改善されているように見えた。この5年間、毎年訪朝しているが、今年はこれまで1週間の滞在で数回経験した停電が、今年は1回も経験しなかった。
商店やレストランなどの商業施設も活況で、この5年間そうであったように、モノも食料も足りないということはなかった。女性の服装もより華やかで多様なものとなり、男女ともに夕刻になるとビールなどを片手に談笑する光景もすでに日常茶飯事になったようだ。
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