絶好調「名鉄」の躍進を阻む3つの不安要素 業績成長を続けるには何が必要か

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名駅付近のビルを、南北400mあまりの駅ビルに建替えを予定している(筆者撮影)

駅前の魅力アップは、JR東海がお手本を見せてくれた。国鉄時代、名古屋の中心は栄だったが、JR東海が名古屋駅を建て替えて「ジェイアール名古屋タカシマヤ」を開設すると、名古屋駅の利用者が増加したのだ。いまや同店は老舗百貨店を追い抜き、名古屋の百貨店の売上高でダントツのトップとなっている。この動きに追従するように、名古屋駅前(名駅)の再開発が続き、いまでは名古屋の中心は名駅地区になった。2027年のリニア中央新幹線名古屋開業をにらみ、名古屋駅西地区にもビジネスホテルの建設ラッシュが続いている。

これは、名鉄にとっても決して悪いことではない。名駅へのアクセスは、名古屋市内を除いて名鉄の得意とするところだからだ。名古屋駅西地区には、名鉄インも11月1日に開業する。

さらに、リニア中央新幹線開業に向けて、名古屋市はJR東海・名鉄なども巻き込んだ名駅地区再開発を積極的に進めている。この計画に合わせて、名鉄も名駅を大きく変えようとしている。この件は、2015年3月の『名鉄が描く「名古屋駅大改造」の青写真とは?』で紹介されている。この計画が実現すると、地下に名鉄名古屋駅のある名鉄百貨店から、近鉄百貨店、名鉄グランドホテルを経て笹島交差点の先にある「名鉄レジャック」、そして日本生命笹島ビルまでの400mあまりがひとつの駅ビルになる。

リニア中央新幹線をJR東海が開通させるのに合わせて、名鉄もその集客力を利用しようとしているとみて良いだろう。ますます名駅地区が発展することが予想される。

歴史の宝庫を活かして誘客を

一方、沿線の魅力アップは、愛知県内と岐阜県南部の鉄道網に加え、名鉄バス・岐阜乗合バス・豊鉄バス・濃飛乗合バスといったバス会社をグループ内に持つ名鉄にとっては、対応しやすい部分と思われる。

近年、歴史に対して興味を持つ人が増えていることから、歴史の中でも人気が高い戦国時代の中心地を沿線に抱える名鉄グループの潜在能力は高いとみて良いだろう。愛知・岐阜両県には、織田信長が天下取りに大きく歩を進めた桶狭間の戦い、織田・徳川軍が豊臣軍と激突した小牧長久手の戦い、天下分け目の戦として知られる関ヶ原といった著名な戦場がある。武田軍と織田・徳川軍が対峙した長篠の戦いも愛知県で起こった。

城郭についても、このエリアには国宝の犬山城をはじめ、名古屋城や信長の居城だった清洲城・小牧城・岐阜城がある。また、家康の故郷である岡崎城や、一夜城で知られる墨俣も、それぞれ愛知県と岐阜県に位置する。まさに、戦国時代の蒼々たる有名な戦場と城郭が愛知県と岐阜県南部にひしめいているのだ。

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