絶好調「名鉄」の躍進を阻む3つの不安要素 業績成長を続けるには何が必要か

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鉄道事業において定期客が増えているのは、製造業を中心とした企業業績が回復した結果だ。名鉄沿線には日本を代表する製造業が多く集積しているため、雇用情勢の回復が通勤定期利用者の増加に結びついた。名鉄の路線網が広がる愛知県の完全失業率は、県の発表によると2016年4~6月で2.3%と極めて低い。

逆に言えば、すでに通勤定期客は上限近くに達していることが予想され、さらなる伸びしろは限られているとみていいだろう。また、非正規従業員の割合が相変わらず多いことから、景気後退局面になると一気に通勤定期客が減ることも予想される。

その景気の面で不安要素が存在する。円高だ。円の対ドルレートは、年平均でみても、2015年が1ドル=約121.0円だったのに対して、2016年には1~9月の平均が108.7円となっている。これは輸出が多い製造業にとってマイナス要因となり、沿線に製造業が多い名鉄にとっても通勤客の減少を招きかねない。

駅近くを基本として、ビジネスホテルも積極展開している(筆者撮影)

また、好調だった訪日外国人の増加にブレーキがかかることも懸念される。政府統計によると、2015年の年間を通じた訪日客の伸び率は前年比47.1%となったのが、今年1~8月の統計では前年同期間比24.7%と大きく減った。訪日外国人客トップ3の韓国、中国、台湾をみると、2015年の平均伸び率がそれぞれ前年比45.3%、107.3%、29.9%だったのが、今年1~8月は28.8%、34.0%、16.9%と、いずれも極端に鈍化している。訪日客が減ると、鉄道・バスだけでなく、ホテルや観光施設の利用動向にも直結するだけに、名鉄全体の売り上げへの影響が出てくる可能性もある。

また、原油価格も気がかりな点だ。石油輸出国機構(OPEC)は9月28日、8年ぶりの減産に合意した。これにより、石油価格が今後上昇を睨む展開になることが予想される。運輸部門が主力の名鉄にとって、原価上昇の可能性が大きくなっていることを示唆している。

通勤以外の増加がポイントに

では、名鉄が明るい近未来を迎えるにはどうしたら良いのだろうか。上で記した最高益からの逆風は、大きく次の3点だった。

1)通勤需要減少の可能性
 2)訪日外国人の増加率低下
 3)原油高の懸念

これらへの対応策を順に検討してみよう。

通勤需要は、企業の雇用情勢が悪化するとすぐに減少に転じる可能性がある。また、この点について名鉄が主導できる部分は限られている。そうすると、利益率が高い定期外客をいかに増やすかがポイントになろう。その対応策は、大きく二つに分けられる。ひとつは名鉄駅周辺の魅力アップであり、もうひとつは沿線の観光開発だ。

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