大再編時代へ突入した大手生保  日生と第一、分かれる大手生保の戦略

相互会社の問題点と株式会社化のリスク

第一の株式会社化に対し、「刺激を受けたことは事実。営業職員改革が先なので、あくまでも"自由研究"ではあるが、あらためて研究したい」(住友生命・橋本雅博常務)、「今は営業職員改革など足元を固めることが優先で見送っているが、重要な選択肢の一つ」(明治安田生命・殿岡裕章専務)と他社が好意的であるのに対して、日本生命だけは、「相互会社のほうが、契約者への還元という観点から望ましい」と岡本圀衞社長はじめ経営陣は、反論している。

皮肉なことに、「出資をして配当をもらう」はザ・セイホのビジネスモデルだ。その親玉がニッポン株式会社の株主である日本生命だ。上場企業の半数の大株主として、ものは言わなくても、保険は売る。さまざまな投融資の情報も得られる。

保険商品は、予定死亡率や事業費率、予定利率を、保険金の支払いが滞りなくできるように安全に見積もって設計される。それと実際の死亡率、事業費率、運用利回りの差から生まれるのが、死差益、費差益、利差益のいわゆる3利源。後から余った分を配当する。本来は儲かって仕方がないうえ、実態が見えにくい。これに相互会社のチェック機能不全も加わって、生保特有のどんぶり勘定、非効率を生んだ。

80年代には資金力を駆って海外も買いあさり、ザ・セイホと呼ばれた。だが、90年代後半から、利差損状態に陥る。いわゆる逆ザヤである。保険会社は保険が売れずに潰れることはない。潰れる原因は東西を問わず運用の失敗だ。30~50年という長い負債のリスクである。その間恐慌のような激変も起こる。90年代末からは長期かつ超のつく低金利と資産デフレが直撃した。資本の薄い順に耐え切れなくなったが、株価8000円でも含み益だったのが日生。最悪期でも実質純資産5兆円を死守した。

このような生保は、バランスシートの資産側のほとんどが時価評価であるのに対して、保険負債の時価評価ができないので(国際会計基準委員会でも議論を呼ぶ)、会計上の記述と経済的価値との乖離が大きすぎる。保険契約の現在価値をエンベデッド・バリューとして開示する向きも増え始めたが、ある想定をおいて計算するだけだ。実際の運用上も問題を生じている。ALM上、資産と負債を現物でマッチさせることは難しく、デリバティブでヘッジすると、ヘッジのみが損益に出るなどだ。

潜在する保険契約の経済価値は大手4社では間違いなくプラスであろう。日生は、かつ巨額に資本をため込み、さらに基金債の発行で上積みするという。原始的だが効果的なリスクヘッジだ。ただし、株式会社化したら、このビジネスモデルは終わってしまう。資本効率や株主還元を要求されだしたら、耐えられない。

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