トヨタ外国人副社長が吠えた「上司と戦え!」 豊田章男社長もほれたフランス人の出世術

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会場からは多くの質問が飛んだ。「トヨタとホンダの違いは何か」との問いには、「ホンダは尊敬している。比較は避けたい。彼らとは北米で激しい競争を繰り広げている。シビックは大成功だ。ただホンダは欧州で存在感が薄い。今のトヨタは情緒的なデザインを入れている。昔は保守的だった。章男社長は『もっといいクルマを作ろうよ』と言っており、デザインは重要な要素だ」と答えた。

「トヨタのプレミアムブランド「レクサス」が期待ほどではなく、ドイツ車に負けているのではないか」という厳しい質問も飛び出した。

車のコモディティ化は避けなければならない

講演に合わせ、慶大三田キャンパスにはレクサス「LFA」や燃料電池車「MIRAI」を展示

これに対し、ルロワ氏は「(メルセデス・)ベンツ、アウディ、BMWは長い歴史があるが、レクサスは25年しかない。ドイツのビッグ3には対抗しない。彼らとはまったく異なる素晴らしい体験を提供する。昨年は65万台を売った。先月は欧州で3割近く販売が伸びた。まだボリュームは少ないが、顧客はいい意味で驚いてくれている。ドイツの記者もレクサスは悪くないと言い始めた。ドイツ人の”悪くない”は、褒めているのと同じだ」と応じた。

一方、自動車業界では業界内の争いだけでなく、自動運転などの先端技術をめぐって異業種との競争が始まっている。そこでIT企業との戦い方に関する質問も出た。

「自動車のコモディティ化は避けないといけない。自動車メーカーがすべて生き残るかというと、ノー。トヨタはデータマネジメントも自動運転も自社でやる。箱を造るだけの会社にはなりたくない。“つながるクルマ”を考えないといけない。これが将来の心臓部になる」(ルロワ氏)。

「YARIMASHO-YO!(やりましょうよ!)」。最後は豊田社長がトヨタ社内でよく口にする言葉で締めたルロワ氏。講演のタイトル通り、存分に熱弁を振るったが、はたして慶大生にはそのパッションとファイティングスピリットが伝わっただろうか。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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