日本銀行・黒田総裁へ、7つの緊急提言 日銀「異次元緩和」の弱点をFedウォッチャーが分析
「量的・質的金融緩和」が緩和効果を持つのは、①資産買い入れによってプレミアムを圧縮することで名目金利の水準を抑えつつ、②インフレ期待を高めることを通じて実質金利を引き下げる、という組み合わせによる。定例会見で、記者から波及経路について再三質問が繰り返されることをみると、黒田総裁はこのメカニズムを説明し切れていないように思えてならない。
時間軸が不定で、「量的・質的金融政策」によってインフレ期待が高まり名目金利を引き上げる要因になるとの見方が中央銀行総裁から示されれば、金利が不安定化・上昇するのは無理もない。加えて、操作目標が無担保コールレート翌日物からマネタリーベースに変更されていることで、イールドカーブは糸が切れた凧のようになってしまっている。(さらに加えて、オペの規模が大き過ぎて、市場の流動性が不足し流動性プレミアムも高まっている。)
かつて2001年3月に日銀が量的緩和策を導入した際、日本経済の低迷はもちろん、アメリカではITバブル崩壊直後であり、無担保コールレート翌日物のコントロールを止めても金利が不安定化・上昇する状況にはならなかった。
しかし、筆者が今回の黒田日銀によるマネタリーベース・コントロールを聞いたときに想起したのは、ボルカー議長時代のFRBが採用した金融政策だった。高インフレに悩まされていたボルカーFRBは、1979年10月、金利コントロールから準備コントロールにシフトした。狙いは金利の不安定化・上昇を許容することだった。
インフレ期待を高めようとすると同時に金利コントロールを捨てれば、ボルカー時代のように金利が不安定化・上昇してしまうのではないか。筆者が抱いた懸念は現実となってしまった。
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