円暴落とハイパーインフレで、日本は復活する 伝説のトレーダー、藤巻健史氏が語る「本物の円安論」(下)

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報道によると、政府・与党は「TPP参加ですべての関税が撤廃された場合、国内総生産が3兆円超増える半面、安い農産品の輸入で農林水産業の生産額は最大3.4兆円落ち込む」との試算をまとめました。「安い農産品の輸入……」とありますが、そもそも外国産農産物が高いか、安いかを決める最大要因は為替であり、関税ではないはずです。たとえば10%の関税障壁をなくしても、円が10%安くなれば輸入農産物の国内価格が上がり、撤廃された関税分はチャラになるのです。

私は、日本経済にとってTPP参加は不可欠だと思っています。だからこそ日本の農家や農業団体には、ぜひ「円安を!」と声を上げていただきたい。もともと味や安全性の点では折り紙付きなのですから、円が大幅安になれば、関税の厚いコメは別にしても、大半の国産農産物は十分に国際競争力がつくはずです。TPP、恐れるに足りません。

米国は、本心ではでドル安を望んでいない

ちなみに米国の農業団体や自動車労組は「ドル安を!」と主張して、よくニュースになったりしています。政治家もそうした産業従事者の地元では、リップサービスとして「ドル安が好ましい」と匂わせる発言をします。だからと言って、米国は本気でドル安を望んでいるのでしょうか。私が「円安がいい」と言うと、「ドル安を願う米国に怒られるから、円安政策は無理だ」と奇妙なロジックを持ちだす人がいますが、本当にそうでしょうか。

ドル安で自国の農業や自動車産業を守ることと、「基軸通貨」としての強いドルの地位を守ることの、どちらが米国にとって重要かということです。論をまちません。ドルが「基軸通貨」であり続けることのほうが、はるかに大きな国益なのです。したがって「その地位を失うリスクのあるドル安政策」を採るはずがありません。ドルが強い基軸通貨であるかぎり、米国はドルを刷りさえすれば、世界中の富を手に入れることができます。こんなおいしい話はないのですから。

「円安誘導は米国が許さない」などという俗論は百害あって一利なし、早く払拭したいものです。だいたい許すも、許さないもありません。今や欧米では日本経済に対する興味そのものが急速に失われつつあり、極端な話、日本の経済がどうなろうと、知ったことではないのです。いわゆる「ジャパンパッシング」です。世界経済における日本のプレゼンスが、それほど小さくなってしまったということでしょう。もちろん円高を放置して、国力を衰退させてしまったせいです。

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