円暴落とハイパーインフレで、日本は復活する 伝説のトレーダー、藤巻健史氏が語る「本物の円安論」(下)
中国の躍進も、人民元の大幅安から始まった
そうしたわが国の愚かな行為に学び、かたくなに自国通貨安を守り抜いている国があります。中国です。中国は、国際社会からの人民元切り上げの要求にのらりくらりと対応し、決して応えようとはしません。
1980年代は1人民元=160円でした。それが今では10分の1にまで安くなり、1人民元=16円程度です。「中国は労賃が安いから成長した」とよく言われますが、あの国の労賃が安いのは今に始まったことではありません。それなのに、なぜ「世界の工場」として急成長したかというと、1990年代後半に突然、通貨が安くなったからです。労働力の対価も当然、為替で決まります。これだけ人民元がずっと安かったからこそ、中国は世界の工場として繁栄できたわけです。
残念ながら、アベノミクスは「時すでに遅し」
前回、安倍政権の円安を進めようとする姿勢は結構だが、金融緩和によって円安に導くという「進め方」が違うと申し上げました。アベノミクスについては、その進め方だけでなく、もうひとつ大きな問題を指摘しなければなりません。それは「時期」の問題です。これが最も深刻な結果、つまり日本の破綻につながる最大の要因だと私は考えています。
私は過去20年にわたって、円安による日本再生を主張し続けてきました。ちょうど10年前の小泉改革時においても、構造改革は進んでいて、日本の将来は結構明るいと思っていました。その後も円安対策さえ打てば、経済のソフトランディングは可能だという信念のもと、あらゆる機会をとらえて、さまざまな施策を提案してきたつもりです。
しかしながら、その間に何が行われたかというと、何も行われませんでした。
為替政策は手つかずのまま、構造改革はむしろ明らかに後退しているではありませんか。私の提案はことごとく異端扱いされ、相手にしてもらえませんでした。せめて5年前に円安政策が実施されていたら……そう思うと、自分の至らなさが悔やまれてなりません。