クリントン大統領誕生でも円高ドル安になる トランプ大統領が消えてもリスクは消えない

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こうした一連の発言は、「トランプ氏が大統領にふさわしくない」と考える国民の数を増やすだけであり、とても賢明な行動とは言えない。もっとも、トランプ氏がここまで候補者として残り、それも第3回目のテレビ討論会の直前まで、支持率の差が5ポイント程度と、クリントン氏に食らいついていたことは、ある意味では奇跡であり、まさに「異例づくめの選挙戦」を演出した立役者でもあったともいえる。

共和党幹部が候補者であるトランプ氏と距離を取り、大統領選での勝利を望まず、むしろ議会選挙での議席確保に注力する旨の発言をしていることや、クリントン氏に投票するという共和党員が出てくるなど、異例中の異例の事態にあるが、それでもトランプ氏の支持はとても大きく落ち込んだとは言えない状況にある。

討論会終了直後にCNNテレビなどが実施した世論調査では、クリントン氏の支持率が52%、トランプ氏が39%となり、さすがに情勢は厳しい。しかし、今回の米大統領選は結果が出るまで何が起きるかわからない。まだまだ予断を許さないといってよいだろう。

今回の米大統領選挙をひとつのドラマとして見ているのであれば楽しめるのだが、市場関係者にとっては、きわめて重要なイベントであることに変わりない。

どちらが大統領になっても、本当に円高ドル安なのか?

選挙の結果次第では、為替市場は大きく動くとの見方も少なくないようである。市場では、クリントン氏とトランプ氏がそれぞれ掲げる政策が実行された場合、いずれもドル円は下落する、つまり円高になるとみられているようである。

果たして本当にそのようになるのだろうか。そこで、最近の米政権とドルの動きを、米国の財政収支との比較でみてみると、かなり明確なトレンドが確認できる。このトレンドを確認するには、米財政収支の対GDP比とドル指数の比較がきわめて有効である。

これらを比較すると、ブッシュ(父)政権(共和党)では、財政赤字の対GDP比が悪化し、ドル指数は下落した。ただし、その下落は比較的緩やかであった。

一方、クリントン政権(民主党)の時代には、財政収支の対GDP比は大きく改善し、ドル指数(主要通貨に対するドルの総合的な価値を指数化したもの)も上昇した。このときの財務長官は、「強いドル」を声高に宣言したルービン氏だったことも興味深い。その後、ブッシュ(子)政権の時代には、財政赤字は大きく悪化し、ドル指数も低下している。

そして、現在の2009年以降のオバマ政権では、当初4年間の財政収支の対GDP比の方向性は明確ではなかったが、政権後半の2013以降の4年間で財政赤字の対GDP比は低下に向かっている。その間、ドル高基調が鮮明になったが、オバマ政権の最終年である今年に入ると、その傾向は明らかに低下し、ドルの上値も抑えられる動きに入っている。

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