日露経済協力の目玉、サハリン・パイプライン プーチン大統領の訪日に何が期待できるのか

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サハリン2鉱区の天然ガスは2009年3月からLNGという形で日本を始め中国・韓国などにも供給されているが、その他のサハリンの天然ガス資源は手つかずのままである。

サハリン1鉱区の事業者は2000年頃、北海道を経由して首都圏を結ぶパイプラインによる輸送を日本政府に要請したが、主な買い手とされていた電力業界が難色を示したため実現に至らなかった。

ロシア側が再びパイプラインに関心を持ち始めたのは「日本側の熱意」だけではない。そこに「中国ファクター」が作用していることは確実である。

中国による大幅値下げ要求を警戒

ウクライナ紛争による欧米の経済制裁で窮地に陥ったロシアは、中国との関係を強化してきた。ロシア原油の最大の輸出先は昨年ドイツから中国へと変わり、天然ガスでも中国のプレゼンスが飛躍的に増大しようとしている。

天然ガスの分野でこれまでのところ中国のプレゼンスはないに等しかったが、2014年5月にプーチン大統領が訪中した際にロシアから中国への天然ガスパイプライン建設が合意されたことで事態は大きく変わった。パイプラインが完成すれば、中国はドイツを抜いてロシア産天然ガスの大輸入国となるからだ。

しかし原油価格の下落により、ロシアが欧州に輸出している天然ガス価格も下落している状況下で、タフな交渉相手である中国が原油価格急落以前の段階で決まったとされる価格で天然ガスを購入するとは思えない。

ロシアから中国に敷設されるパイプラインは「シベリアの力」と呼ばれており、「東ルート(サハリン~ウラジオストク経由、年間380億立方メートル)」と「西ルート(西シベリア経由、年間300億立方メートル)」がある。

今年7月ガスプロムと中国石油天然気集団公司(CNPC)の間で西ルートの建設に関する契約の調印が無期延期となった。中国経済の急減速で天然ガス需要が低下したため、中国側は大幅な価格引き下げを求めていることがその要因であると見方が強い。

東ルートについては2019年の完成に向けて着々と工事が進んでいるとされているが、ガスプロムは今年2月パイプライン建設費を前年の半分に削減した(約1380億円)。ガスプロムはその理由を明らかにしていないが、「ロシア側は供給開始後に中国が理不尽な値下げ交渉をしてくるのではないかと恐れている」との観測がある。

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