JR九州の「初値3100円」は、高いのか安いのか 本業の鉄道は厳しいが不動産事業には強み
日本の不動産価値は、JR駅周辺が一番高く、駅から遠ざかるほど低くなる傾向がある。駅周辺の不動産を保有しているJR東日本は、不動産会社としてきわめて有利な立場にあった。
JR九州にも同じ連想が働く。もちろん九州と東京で、不動産価値は異なるが、JR九州は「JR博多シティ」など九州の主要都市で一等地に優良物件を有する。これから、鉄道事業の見直しにより、さらに事業を拡大する余地が出てくるだろう。
JR九州のもう1つの強みは、上場と同時に、完全民営化を一度で実現させたことだ。政府保有株がなくなり、JR九州の経営を縛る「JR会社法」の適用から外れる。経営自由度が高まることにより、積極経営を展開しやすくなる。
これと対照的なのが、日本郵政グループ3社だ。全国の郵便局ネットワークを活用して、さまざまな新規事業に参入し収益を拡大する潜在力を持つが、すぐに自由な事業展開はできない。政府の保有比率が高いので、今のままでは、官業による民業圧迫と言われる。国債利回りの低下で、収益力が急速に低下しつつあるが、政府保有比率が大きく低下するまでは、事業展開に縛りが残る。
ローカル線のコストを下げることができるか
JR九州の投資価値は、これからの経営によって変わる。不動産事業や新幹線で利益を拡大する期待があっても、ローカル線が足を引っ張り続ければ、成長は見込めない。地域の利便性を損なわない形で、ローカル線のコストを下げる知恵が求められる。その議論が、完全民営化を達成した今から、始まることになる。
1つ参考になるのが、先に完全民営化を達成したJR東日本のやり方だ。東日本大震災で被災した赤字ローカル線の一部では、鉄道を復旧せず、BRTというバス輸送で代替することを決めている。かつての線路をバス専用道路に、駅をバスステーションに衣替えするアイディアだ。
緊急車両とバスしか通らない専用道路を使うので、バス輸送で問題になる渋滞による遅れは発生しない。地元の要望に応じて、停留所を増やす自由もある。これは、地域の利便性を大きく損なわずにコストカットを行う1つの例といえる。
JR九州は、現時点で「赤字ローカル線を廃止する予定はない」としか言っていない。これからさまざまな検討が始まると考えられる。
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