「ピコ太郎」が世界でこんなにも売れた理由

一種のまぐれ当たりだが、そこに意味がある

ピコ太郎の正体と噂されているのは、お笑い芸人の古坂大魔王である。日本の芸人のネタが世界で認められた、という意味でもこれは初めてのことだ。これまでにも、数多くの芸人が海を渡り、海外で自分の芸が通用するのか挑戦してきた。その中には、テレビの企画物もあれば、単発のライブもあるし、本人が海外に移住してしまうパターンもある。

たとえば、「間違いない」という決めフレーズで有名な長井秀和は単身ニューヨークに渡り、英語を身に付け、現地のコメディクラブでスタンダップコメディを披露するまでになっていた。ただ、ひとつのネタとしての楽曲が国境を越えてこれほどまでに多くの人に伝わったというのは、かつて一度もなかったことだ。

「お笑い」もガラパゴス化している

なぜ過去に例がなかったのかというと、そもそも、日本の芸人のほとんどは初めから海外を目指していないからだ。たとえ日本でやっていることをそのまま海外でやったとしても、あまり高くは評価してもらえないだろう、というのを彼らは本能的にわかっている。日本の芸人は日本人の客に満足しているし、日本人の客も日本の芸人に満足している。他の多くの産業と同じように、日本では「お笑い」もガラパゴス化している。

なぜそうなるかといえば、日本のお笑いには十分な大きさのマーケットがあるからだ。1億2000万人を超える国民がいて、テレビの視聴者も大勢いる。テレビで名を上げれば、それなりの収入と地位が得られることは約束されている。だから、ほとんどの芸人は真っ先にそこを目指すし、それ以外の可能性は考えもしない。

さらに言えば、お笑いというのは言語に対する依存度が高い。音楽や芸術ならば、言葉に頼らないので国境を越えられる可能性がある。しかし、言葉に頼る割合が高いお笑いという分野では、その面白さは日本語が通じる範囲でしか通用しない。

ピコ太郎は、自ら世界進出を狙って当てたわけではないと思う。これは一種のまぐれ当たりだ。ただ、たとえまぐれであっても、こういうものがたまたま当たった、ということには意味がある。

「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」は、短くてシンプルな歌ネタ。単純な英単語しか使われていないので、世界中の人が理解できる。言葉の壁を越えているうえに、短い尺に収めることで人々の間でその動画を紹介し合ったり、真似したりすることも気軽にできる。作り手のなにげないアイデアから生まれたパフォーマンスは、たまたま無駄をそぎ落とした世界標準のフォーマットになっていた。だからこそ、「PPAP」は海を越えたのだ。

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