日本のLCCが「鉄道の強敵」になれない理由

安定性でビジネス客は敬遠、燃料税もネック

2000年代に入ると、ダイヤ改正の度に寝台夜行列車が廃止されているが、その都度、JR各社は「格安の高速バスやLCCが誕生したため、利用者が減少している」と、廃止になる理由を説明する。寝台夜行列車は、特急料金に加えて寝台料金が加算されるため、新幹線よりも価格面では、割高になってしまう。

だがLCCと寝台夜行列車の利用者層は大きく異なっている。寝台夜行列車に関しては、「サンライズ瀬戸・出雲」であれば、航空の最終便が出発した後で出発し、翌朝の始発便を利用するよりも先に目的地へ到着するため、東京~岡山・高松間ではビジネス需要もある。

廃止されてしまったが、「北斗星」「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」を利用する人達は、その列車に乗車することが目的であるため、最初からLCCは眼中に無い。価格面では、新幹線やFSAよりも割高な上、所要時間も掛かるが、利用者はゆったりとした列車の旅を楽しむことを目的としている。利用者層及び利用目的が全く異なるのである。

LCCは、機材の運用効率を高めて利益を出すビジネスモデルであるため、羽田~新千歳線、羽田~福岡線などの高需要の路線に参入しないと利益は出ない。現在、「サンライズ瀬戸・出雲」は、東京~高松・出雲市間で運転されているが、羽田~高松線や羽田~出雲線、羽田~岡山線では、航空需要そのものが低いため、LCCが就航しても利益は出ない。それゆえLCCが今後も参入してくるとは考えにくいことから、寝台夜行列車のライバルにもならないと言える。

安定性に課題、LCC飛躍は難しい?

LCCを利用する人は、観光や帰省を目的とした比較的若く、所得の低い人達である。この人達は、以前は高速バスを利用したり、LCCが無い時代は帰省を諦めたりしていた。LCCのライバルは、新幹線や寝台夜行列車ではなく、高速バスであると言える。またLCCの誕生は、新たな需要を創り出したと言っても過言ではない。

だがLCCは、安定供給という面で大きな課題を抱えている。APJは、パイロットの給料を下げて格安運賃を提供するため、JALを定年退職した人などを大量に採用した。結果、2014年4月24日には、52名中8名の機長が病欠し、さらには新規採用や副操縦士の機長昇格が予定通りに進まず、運航要員が確保できなくなり、同年5月19日から10月まで、合計2082便が欠航するなど、鉄道では考えられない事態が発生した。

今でも、LCCなどは機長を始めとしたパイロット不足が慢性化している。当面、ビジネスマンは新幹線を志向するとみられ、LCCが大きく飛躍するとは言いづらいのが、日本の現状である。

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